すぐにブランデーと紅茶が運ばれてきた。代わりに、手つかずのまま残されたモルドレッド殿下の食事が静かに下げられていく。
第二王妃殿下はブランデーの香りを吸い込みながら、乱れた呼吸をゆっくり整えていた。
私も見習うように紅茶のカップを両手で包み込み、熱い湯気を吸い込むように深く呼吸した。
「……ジニー、落ち着いたかしら」
「はい、少しですが」
「先ほどの手紙……念のために確認しますが、あなたは見覚えはないわね?」
「ございません」
「モルドレッドの筆跡だったかしら」
「よく見えませんでしたので何とも……そもそも、私たちに確認などさせてはくれないでしょうし」
「そうよねえ」
第二王妃殿下はブランデーの入ったグラスを静かに回しながら、揺れる琥珀色の液体を黙って見つめていた。
私は少し迷ったあと、モルドレッド殿下に薦めようとしていた果物を侍女に取ってもらい、口へ運んだ。
一言で言ってしまえば……私たちは、完全に“嵌められた”。
ここ最近、派手に動いてはいなかったとはいえ、モルドレッド殿下は着実に勢力を伸ばしていた。
城下町に名を広め、貴族たちとの交流を進め、王位継承権を手放さない可能性をそこかしこで匂わせてきた。
私だってそうだ。
モルドレッド殿下の後ろ盾になると公言し、殿下が廃嫡しない可能性をほのめかしてきた。
少し、やり過ぎたのかもしれない……。
でも、今それを言っても仕方ない。
「第二王妃殿下」
「なにかしら」
「作戦会議と参りましょう」
私がそう告げると、第二王妃殿下は一瞬きょとんとしてから、小さく微笑んだ。
「そうね。息子を奪われたからって、めそめそしている場合ではないわ。ジニー、囚われの姫が、ただ囚われているだけではないことを見せてあげましょう」
「はい、殿下」
「それに、そろそろ私の夫も返してもらいたいですしね」
「殿下……?」
第二王妃殿下はグラスの中身を一気に空けると、そのまま勢いよく立ち上がった。
「状況を不審に思っているのは、あなたたちだけではないということですよ」
窓を背にして立つ第二王妃殿下が、どんな顔でそれを言ったのかはわからない。
けれど、モルドレッド殿下によく似たその声は、それだけで不思議と頼もしかった。
第二王妃殿下はブランデーの香りを吸い込みながら、乱れた呼吸をゆっくり整えていた。
私も見習うように紅茶のカップを両手で包み込み、熱い湯気を吸い込むように深く呼吸した。
「……ジニー、落ち着いたかしら」
「はい、少しですが」
「先ほどの手紙……念のために確認しますが、あなたは見覚えはないわね?」
「ございません」
「モルドレッドの筆跡だったかしら」
「よく見えませんでしたので何とも……そもそも、私たちに確認などさせてはくれないでしょうし」
「そうよねえ」
第二王妃殿下はブランデーの入ったグラスを静かに回しながら、揺れる琥珀色の液体を黙って見つめていた。
私は少し迷ったあと、モルドレッド殿下に薦めようとしていた果物を侍女に取ってもらい、口へ運んだ。
一言で言ってしまえば……私たちは、完全に“嵌められた”。
ここ最近、派手に動いてはいなかったとはいえ、モルドレッド殿下は着実に勢力を伸ばしていた。
城下町に名を広め、貴族たちとの交流を進め、王位継承権を手放さない可能性をそこかしこで匂わせてきた。
私だってそうだ。
モルドレッド殿下の後ろ盾になると公言し、殿下が廃嫡しない可能性をほのめかしてきた。
少し、やり過ぎたのかもしれない……。
でも、今それを言っても仕方ない。
「第二王妃殿下」
「なにかしら」
「作戦会議と参りましょう」
私がそう告げると、第二王妃殿下は一瞬きょとんとしてから、小さく微笑んだ。
「そうね。息子を奪われたからって、めそめそしている場合ではないわ。ジニー、囚われの姫が、ただ囚われているだけではないことを見せてあげましょう」
「はい、殿下」
「それに、そろそろ私の夫も返してもらいたいですしね」
「殿下……?」
第二王妃殿下はグラスの中身を一気に空けると、そのまま勢いよく立ち上がった。
「状況を不審に思っているのは、あなたたちだけではないということですよ」
窓を背にして立つ第二王妃殿下が、どんな顔でそれを言ったのかはわからない。
けれど、モルドレッド殿下によく似たその声は、それだけで不思議と頼もしかった。



