バケーション直前のある日、私は第二王妃と共にお茶会を開催していた。
主催は第二王妃だけど、開催は私が依頼したもので、王妃殿下とアーサー殿下派の家柄の令嬢らを集めてもらった。
第二王妃自慢の庭には東屋がいくつも設けられ、白いクロスのかかったテーブルと椅子が並べられていて、令嬢たちが自由に散策できるようになっていた。
「お久しぶりです、ジェニファー様」
「お久しぶりです。本日はお会いできて嬉しいですわ」
「ジェニファー様とこのような場でお目にかかるのは初めてですわね」
「ご挨拶が遅くなってしまい、申し訳ありません。わたくし、このような場が得意ではなくて……粗相がありましたら、遠慮なくおっしゃってくださいね」
今回いらしてくれた令嬢たちは、アーサー殿下派の中でも比較的穏健な家柄の者がほとんどだ。
第二王妃主催の場に足を運んでくれた時点で、その姿勢は十分にうかがえた。
もっとも、物見遊山半分だったり、こちらの様子を探りに来た方もいらっしゃるのだけれど。
「まあ、ヴォーティガン嬢はわたくしどものような下級貴族と関わることなんて、なかなかありませんものね」
「とんでもない」
私は相手の男爵令嬢の顔を静かに見つめた。
「ヴォーティガン家はお恥ずかしながら、お茶会を催す機会もあまりありませんの……領地が広いぶん、周囲に他の貴族家がございませんから。それに今日は第二王妃様のご厚意で参加させていただいておりますけれど、普段はなかなかそうもいかなくて」
嘘にならない範囲で、相手を否定しないよう慎重に言葉を選んだ。
男爵令嬢は気まずそうに視線を下にやった。
囚われの令嬢という立場は、ここでは遠慮なく利用させていただこう。
「よろしければ、他のお茶会のお話を聞かせてくださいます? 女性同士のおしゃべりというものを、わたくしもしてみたいの」
「で、ですが、あなた様はモルドレッド殿下と婚約していらっしゃるのよね? であれば」
敵だと言いたげだったけれど、令嬢は私の顔を見ると口をつぐんだ。
いつの間にか周囲の令嬢たちも静まり返り、私たちへ視線を向けていた。
「婚約はしておりません。国王陛下の許しが得られませんもの」
気丈に見えるよう、静かに微笑んでみせた。
「モルドレッド殿下とアーサー殿下は、とても仲の良いご兄弟でいらっしゃいますわ。モルドレッド殿下ったら、わたくしよりアーサー殿下とお食事をご一緒されることのほうが多いくらいですもの」
「そ、そうなんですの?」
これは本当だ。
もっとも、それもここ半年ほどの話だけれど。アーサー殿下と国王陛下の様子をうかがうため、モルドレッド殿下は王宮で食事をとるようになったのだ。
男爵令嬢の瞳から、警戒の色が薄れた。
「アーサー殿下は落ち着いていらっしゃいますし、政務にもとても熱心に取り組んでいらっしゃいますわ。ぜひ今後とも、モルドレッド殿下ともども協力してまいりたいですの」
「ええ、ええ、そうですわよね」
穏健派の中でも有力な伯爵家の令嬢が、穏やかな声を上げた。
「ご兄弟仲良く我が国を治めていただきたいですわね。ところで、ジェニファー様はモルドレッド殿下と地方への視察に参られたのでしょう?」
「我が家にもお越しくださいましたわよね」
張りつめていた空気が、ふっとやわらいだ。
令嬢たちの集まりらしい、のどかなお茶会の雰囲気へと変わっていく。
「こちら、我が領から取り寄せた香辛料を使っておりますの。みなさま、ぜひ召し上がって?」
「まあ、良い香り」
「お味も甘いだけではなくて……いけませんわ、手が止まらなくなってしまいます」
そうして、和やかな雰囲気のままお茶会を終えた。
***
主催は第二王妃だけど、開催は私が依頼したもので、王妃殿下とアーサー殿下派の家柄の令嬢らを集めてもらった。
第二王妃自慢の庭には東屋がいくつも設けられ、白いクロスのかかったテーブルと椅子が並べられていて、令嬢たちが自由に散策できるようになっていた。
「お久しぶりです、ジェニファー様」
「お久しぶりです。本日はお会いできて嬉しいですわ」
「ジェニファー様とこのような場でお目にかかるのは初めてですわね」
「ご挨拶が遅くなってしまい、申し訳ありません。わたくし、このような場が得意ではなくて……粗相がありましたら、遠慮なくおっしゃってくださいね」
今回いらしてくれた令嬢たちは、アーサー殿下派の中でも比較的穏健な家柄の者がほとんどだ。
第二王妃主催の場に足を運んでくれた時点で、その姿勢は十分にうかがえた。
もっとも、物見遊山半分だったり、こちらの様子を探りに来た方もいらっしゃるのだけれど。
「まあ、ヴォーティガン嬢はわたくしどものような下級貴族と関わることなんて、なかなかありませんものね」
「とんでもない」
私は相手の男爵令嬢の顔を静かに見つめた。
「ヴォーティガン家はお恥ずかしながら、お茶会を催す機会もあまりありませんの……領地が広いぶん、周囲に他の貴族家がございませんから。それに今日は第二王妃様のご厚意で参加させていただいておりますけれど、普段はなかなかそうもいかなくて」
嘘にならない範囲で、相手を否定しないよう慎重に言葉を選んだ。
男爵令嬢は気まずそうに視線を下にやった。
囚われの令嬢という立場は、ここでは遠慮なく利用させていただこう。
「よろしければ、他のお茶会のお話を聞かせてくださいます? 女性同士のおしゃべりというものを、わたくしもしてみたいの」
「で、ですが、あなた様はモルドレッド殿下と婚約していらっしゃるのよね? であれば」
敵だと言いたげだったけれど、令嬢は私の顔を見ると口をつぐんだ。
いつの間にか周囲の令嬢たちも静まり返り、私たちへ視線を向けていた。
「婚約はしておりません。国王陛下の許しが得られませんもの」
気丈に見えるよう、静かに微笑んでみせた。
「モルドレッド殿下とアーサー殿下は、とても仲の良いご兄弟でいらっしゃいますわ。モルドレッド殿下ったら、わたくしよりアーサー殿下とお食事をご一緒されることのほうが多いくらいですもの」
「そ、そうなんですの?」
これは本当だ。
もっとも、それもここ半年ほどの話だけれど。アーサー殿下と国王陛下の様子をうかがうため、モルドレッド殿下は王宮で食事をとるようになったのだ。
男爵令嬢の瞳から、警戒の色が薄れた。
「アーサー殿下は落ち着いていらっしゃいますし、政務にもとても熱心に取り組んでいらっしゃいますわ。ぜひ今後とも、モルドレッド殿下ともども協力してまいりたいですの」
「ええ、ええ、そうですわよね」
穏健派の中でも有力な伯爵家の令嬢が、穏やかな声を上げた。
「ご兄弟仲良く我が国を治めていただきたいですわね。ところで、ジェニファー様はモルドレッド殿下と地方への視察に参られたのでしょう?」
「我が家にもお越しくださいましたわよね」
張りつめていた空気が、ふっとやわらいだ。
令嬢たちの集まりらしい、のどかなお茶会の雰囲気へと変わっていく。
「こちら、我が領から取り寄せた香辛料を使っておりますの。みなさま、ぜひ召し上がって?」
「まあ、良い香り」
「お味も甘いだけではなくて……いけませんわ、手が止まらなくなってしまいます」
そうして、和やかな雰囲気のままお茶会を終えた。
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