人質令嬢、第二王子と国家反逆を狙う

 日が落ちる前に、私と殿下は切り上げて、馬車で城の裏門から戻った。

 離宮の庭園へ入ったところで、私たちはそろって足を止め、顔を見合わせた。


「大丈夫だったかな」

「おそらく。でも、第一王子とやってることが同じでは?」

「喧嘩を止めてるんだから、私利私欲ではない……はず」

「やり方がぎりぎりですわ、殿下」


 先ほどの喧嘩も、人々が私たちの正体に気づいて騒ぎになりかけたときも、殿下は『抑制』の能力で場を静めていた。

 そんな危ういやり方を、視察から戻ってから、私たちは週に一度のペースで続けてきた。


「しかし、成果は出ているようですよ」


 離宮から迎えに出てきた殿下の補佐官が、手元の紙の束に目を落とした。


「『モルドレッド殿下が城下町を視察なさっている』『殿下の来訪により治安が改善』『庶民にも丁寧で親切なヴォーティガン嬢』……」

「なんですの、それ」

「城下町で売られていた新聞です。どうぞ御覧ください」


 渡された新聞を殿下と一緒に覗き込むと、たしかに殿下をたたえる記事がいくつも載っていた。私はそっと畳み、補佐官へ返した。


「この調子で頑張ろう、ジニー」

「やりすぎないようになさってくださいね」

「努力する」


 補佐官が新聞とは違う書類を取り出し殿下に渡した。


「さ、夕飯まで時間があります。殿下の決定を待つ書類が山のようにございますから、どうぞ、お戻りください」

「うぐ……。じゃあまた、ジニー。夕食のときに」

「はい、殿下」


 頭を下げて殿下を見送った。

 私にももちろん山ほどやることがある。

 執事に呼びにこられる前に、私も仕事へ戻ろう。