そもそも私はヴォーティガン辺境伯の長女である。
我がブリテニア王国は島国で、東の海の向こうにある大国ゲルソンからの侵略を頻繁に受けていた。
それを武力で防いだのが我がヴォーティガン家だ。
今のところは小康状態で、私が生まれてから二十年弱ほど、多少の小競り合いはあっても緊張するほどではない状況が続いている。
しかし、いつ何時、何があるかはわからない。
ヴォーティガン家では常々、兵士の鍛錬や武装、戦支度を怠らないよう心がけてきた。
……それが、裏目に出た。
脳みそ花畑の現国王……いえ、平和に慣れきったウーゼル・ドレイク国王は、
「なぜ、平和なのに武装する必要が? そういう態度がゲルソンを戦に駆り立てるのではないのかね?」
と言い出した。
思いつく限りの語彙で罵倒したいところだったが、そこは堪えた。
でも、ウーゼル王の愚行はそれだけに収まらなかった。
武装の理由として、ドレイク王家への反乱の可能性を挙げた。
わたくしの持つ能力が『鼓舞』だったことも、不運だった。
ブリテニアに住まう人間は、生まれたときに妖精から一人につき一つの能力を贈られる。
ウーゼル王は『調和』、モルドレッド殿下は『抑制』。
どちらも周囲にいる人々を落ち着かせたり、興奮を抑えて対話に持ち込んだりする能力だ。
私の『鼓舞』は言葉の通り、兵士の士気を上げたり、勇気づけたりすることができる。
その能力でもって民を扇動し、反乱を企てているのでは……と疑われ、私は十歳を過ぎた頃から第二王妃の離宮にとらわれることになった。
父の方針で七歳から兵士に交じって鍛錬を重ね、私がかけ声をかけることで鍛錬の効果やモチベーションを向上させ……そうしたことをしてきたため、ウーゼル王の懸念はあながち間違いではなく、父上も強く反発できなかったらしい。
それに、モルドレッド殿下にも常々お伝えしているように、第二王妃殿下は私にとてもよくしてくださっている。
衣食住はモルドレッド殿下とほぼ変わらないものを用意してくださっているし、国王には秘密で朝晩の兵士の鍛錬にも参加させてもらっている。
勉強面でもモルドレッド殿下と同世代だし、人質だからといって最低限の知識すら身につけさせないのは王家の威信に関わると言って、殿下とほぼ同じ教育を施してくださっている。
お茶会やダンスパーティ等の社交界でも同様だ。
「第二王妃は貴族の子女にマナーを身につけさせることもできないなんて噂が立ったら、わたくしの面目が立ちませんわ」
とおっしゃる。
第二王妃自身も、私と同じような経緯で嫁いでいるから、というのも大きいだろう。
彼女は西の海岸沿いを治める辺境伯の次女だ。
とはいえウーゼル王や正妃とも仲がよく、国王陛下、正妃殿下、第二王妃殿下、それぞれの息子たちで晩餐を共にすることも多い。なんなら私まで呼んでくださるから、あまり幽閉や囚われている感は、普段の生活にはなかった。
……たまに、堂々と兵士の鍛錬に参加したくなるくらいだ。
我がブリテニア王国は島国で、東の海の向こうにある大国ゲルソンからの侵略を頻繁に受けていた。
それを武力で防いだのが我がヴォーティガン家だ。
今のところは小康状態で、私が生まれてから二十年弱ほど、多少の小競り合いはあっても緊張するほどではない状況が続いている。
しかし、いつ何時、何があるかはわからない。
ヴォーティガン家では常々、兵士の鍛錬や武装、戦支度を怠らないよう心がけてきた。
……それが、裏目に出た。
脳みそ花畑の現国王……いえ、平和に慣れきったウーゼル・ドレイク国王は、
「なぜ、平和なのに武装する必要が? そういう態度がゲルソンを戦に駆り立てるのではないのかね?」
と言い出した。
思いつく限りの語彙で罵倒したいところだったが、そこは堪えた。
でも、ウーゼル王の愚行はそれだけに収まらなかった。
武装の理由として、ドレイク王家への反乱の可能性を挙げた。
わたくしの持つ能力が『鼓舞』だったことも、不運だった。
ブリテニアに住まう人間は、生まれたときに妖精から一人につき一つの能力を贈られる。
ウーゼル王は『調和』、モルドレッド殿下は『抑制』。
どちらも周囲にいる人々を落ち着かせたり、興奮を抑えて対話に持ち込んだりする能力だ。
私の『鼓舞』は言葉の通り、兵士の士気を上げたり、勇気づけたりすることができる。
その能力でもって民を扇動し、反乱を企てているのでは……と疑われ、私は十歳を過ぎた頃から第二王妃の離宮にとらわれることになった。
父の方針で七歳から兵士に交じって鍛錬を重ね、私がかけ声をかけることで鍛錬の効果やモチベーションを向上させ……そうしたことをしてきたため、ウーゼル王の懸念はあながち間違いではなく、父上も強く反発できなかったらしい。
それに、モルドレッド殿下にも常々お伝えしているように、第二王妃殿下は私にとてもよくしてくださっている。
衣食住はモルドレッド殿下とほぼ変わらないものを用意してくださっているし、国王には秘密で朝晩の兵士の鍛錬にも参加させてもらっている。
勉強面でもモルドレッド殿下と同世代だし、人質だからといって最低限の知識すら身につけさせないのは王家の威信に関わると言って、殿下とほぼ同じ教育を施してくださっている。
お茶会やダンスパーティ等の社交界でも同様だ。
「第二王妃は貴族の子女にマナーを身につけさせることもできないなんて噂が立ったら、わたくしの面目が立ちませんわ」
とおっしゃる。
第二王妃自身も、私と同じような経緯で嫁いでいるから、というのも大きいだろう。
彼女は西の海岸沿いを治める辺境伯の次女だ。
とはいえウーゼル王や正妃とも仲がよく、国王陛下、正妃殿下、第二王妃殿下、それぞれの息子たちで晩餐を共にすることも多い。なんなら私まで呼んでくださるから、あまり幽閉や囚われている感は、普段の生活にはなかった。
……たまに、堂々と兵士の鍛錬に参加したくなるくらいだ。



