人質令嬢、第二王子と国家反逆を狙う

 彼女と初めて出会ったのは、俺が十を少し過ぎたころだった。


 ヴォーティガン領で反乱の兆しを察した父上が、ヴォーティガン卿と再三やり取りを重ねた末、長女である彼女を預かることで、その忠義を信じたと聞いている。

 今となっては、実態がどうであったのか、俺にはわからないけど。

 母から紹介されたときのジニーは、今と変わらないふわふわの明るい髪に、真っ直ぐな瞳をしていた。それに、大人顔負けの落ち着いた挨拶と、差し出された小さいのに剣だこだらけの固い手。

 俺は転がり落ちるように、彼女に恋をした。

 彼女の境遇を不憫に思った母は、ジニーへほとんど俺と同じ待遇を用意した。授業も、ダンスの練習も、衣服も食事も、どれひとつ俺に引けを取らないよう整えられていた。


 俺と彼女は、デビュタントで互いのパートナーを務めた。そのころには俺にも微笑んでくれるようになっていて、嬉しくてたまらなくて、ファーストダンスを終えた勢いのままプロポーズした。けれど、彼女は自分の立場を理由にあっさり断った。それから数年、時折プロポーズしては振られている。


 彼女が断るたび、「私も殿下のことをお慕いしておりますが」と最初に添えるようになったのは、いつからだっただろう。

 俺もだよ。

 誰よりも、君のことをお慕い申し上げている。

 でも、だから。

 君にだけは嘘はつけない。

 ジニーに、


「どうなさいますか、殿下」


 ――と、あの真っ直ぐな瞳で見つめられたら、俺はきっと、覚悟も決めていないくせに、


「やろうか」


 なんて返してしまうんだろう。

 だから、もう少しだけ待っていてほしい。


 俺が腹をくくるまで。