人質令嬢、第二王子と国家反逆を狙う

 ウーサー王への違和感について話した翌日。

 早朝の鍛錬を終え、水浴びのあと浴室を出ると、モルドレッド殿下が廊下に立っていた。


「おはようジニー、一緒に朝ごはん食べよう」

「おはようございます、殿下。喜んでご一緒いたします」


 殿下は力の抜けたように、ふにゃりと笑った。

 目の下にはクマがあって、顔は青白い。

 私は傍にいた侍女に目配せをした。

 優秀な侍女はすぐに意図を察し、足早に厨房へ向かっていった。


「なに?」

「殿下、こちらへ」


 モルドレッド殿下の腕へそっと手を添え、私は離宮の庭へ歩き出した。


 庭の一番奥にあるガポゼには、三人掛けのベンチと楕円形のテーブルがひっそり置かれているだけだった。

 その奥には細い人工の川が造られていて、水音を立てながら静かに流れていた。

 ベンチの真ん中に、私とモルドレッド殿下は並んで腰を下ろした。


「ジニー?」

「静かな場所がよいかと思いまして」

「……うん。悪いね、気を遣わせて」


 頭半分ほど高い位置にある殿下の顔を、静かに見上げた。

 下がった眉、不安げに引きつった口角、そして潤んだ緑の瞳。


「構いませんわ。いつもルディが、私にしてくださっていることでしょう?」

「キスしていい?」

「ダメです」


 殿下は困ったように、小さく首をかしげた。

 そんなかわいいことをしてもダメ。

 だって、後ろから侍女たちの足音が近づいてきていたのだから。


「まずは朝ごはんをいただきましょう。お腹が満たされたら、お話を聞かせてくださいな、殿下」

「うん、俺、お腹空いちゃった」

「私もです。今朝の訓練は、一段と厳しかったんですのよ」

「その話も、あとで聞かせてくれ」

「よろこんで」


 侍女たちが、白いクロスのかかったテーブルへ朝食を並べていく。

 肉をたっぷり挟んだサンドイッチに、ハムとチーズを添えたサラダ。冷えた牛乳と、彩りの良いフルーツ。


「……ずいぶん、大盛りだね」

「そうですか?」


 苦笑する殿下に笑いかけた。


「元気がないときは、肉ですよ」

「君を見てると、ヴォーティガン家の令嬢なんだなって実感するよ。……頼もしい」


 殿下は苦笑しながら手を伸ばし、一番大きなサンドイッチを選んだ。

***