社長と出会ってしまったら、甘く溺愛されるだけ。

今日初めて見た社長の顔はクマが出来ていて……だから私はわざと優しく微笑んだ。



「もうどうしても行けなくて。医者にも行ったら駄目だって言われて。熱が治った三日後、土下座する勢いで会社に入ったら皆んな普通にしてました。『本当にすみません! 大丈夫でしたか?』って聞いたら、『大変だったけど、一応無事終わったから大丈夫』って言われたんです」

「その時、私は思ったんです。悪い意味じゃなくて、良い意味で、みんな必死に生きているんだな、って。でも、どの人も頑張れる分しか頑張れないんです。私が会社にいなくても大丈夫って意味じゃない。私が会社に必要だからこそ、休んでも、結局次に出勤した時に頑張るしかないんです」

「私、変な所でポジティブだから自信があるんです! 私が休んだら会社は困ります! でも、会社が回らない訳じゃない」



私はくまのキーホルダーを社長の手から取り、くまの手で社長の頭を撫でるふりをする。



「会社に私がいなかったら、会社は困るけど回らない訳じゃない。そう思うと凄く勇気が出ませんか? 自分がいなくても良い訳じゃない!ちゃんと必要だけど!……うん、なんか気が軽くなる」

「社長は私と違って社長だから休みにくいかもしれませんけど、逆を言えば休みくらい社長権限で好き放題したって良い!!!なんて、ズルいことを言う人が一人ここにいることを覚えておいて下さい」

「ちなみに私はいま社長相手に偉そうなことを言いました。だから今日のことは二人共忘れる、でどうですか?」



疲れて相手に弱いところを見られた時、人はあとになって「どうしよう!これから顔を合わせずらい!」って気にするもの。