あの人がコロサレタ

昨日、加納さんが何者かによって殺された。


私の学校には、ある奇妙な噂がある。


それは、"おじいさんに触れたら殺される"という噂だった。


昔この学校は病院だった。


ある日、その病院で火事があり、ひとりのおじいさんが巻き込まれた。


おじいさんがどれだけ叫んでも、助けは来なかったという。


そして、そのおじいさんは焼けて亡くなったが、いくら探しても骨が見つからないとのことだった。


それからしばらくして学校が建った。


その学校に私は通っている。


おじいさんは学校に潜んでいて、ひとりでいる生徒に助けを求めて襲いかかるそうだ。


それに対して、抵抗して触れると死ぬ。


例えばおじいさんの右腕に触ると、右腕を切断されて亡くなるんだとか。


過去にはおじいさんの顔を触ったせいで、顔を潰されて亡くなった人もいるらしい。


これは先輩から聞いた話で最初は冗談だろうと思っていたけれど、私たちの代で初めて加納さんという犠牲者が出たのだ。


学校の防犯カメラを確認した先生は、「おじいさんなんて映っていなかった。加納が急に何かに抵抗し始めて、やがて右腕が落ちた」


と言っていた。


この話を聞いて、やっぱりこの噂は本当なのだろうと確信した。


『学校を休めばいいのではないか』


そう思ったが、学校を休むとおじいさんは家に現れるらしい。


だからみんな、どれだけ体調が悪くても無理して学校に来るのだ。


「亜紀」


私の名前を呼んだのは、親友のリノアだった。


日本とブラジルのハーフの子で、目が大きい。


「"加納さんのおじいさん事件"、知ってる?」


リノアもあの噂を知っているのだろうか。


「うん、知ってる」


「やっぱりおじいさん、この学校にいるんだね…」


リノアが怯えた表情で言った。


「そうみたい」


私は内心、『次は私かも』なんて焦っていたけれど、できるだけ冷静さを保っていた。


「これからは私たちは二人で行動しようね。絶対にひとりになっちゃダメだよ?」


たまにリノアが、課題が終わってないだとか体調が悪いだとか…。


そういうときにひとりで行動する私にリノアはそう言った。


「私、今日も課題やり忘れちゃった。教えてほしい!」


そう言って私の前で手を合わせるリノア。


いつもはひとりで黙々とやっているが、今はひとりになっている場合ではないのだろう。


「仕方ないなー。今日だけだよ?」


こうは言ったものの、きっとこの先もリノアが課題をやり忘れたときは、教える係になるつもりだ。


「さっすが亜紀!ありがとう!」


リノアは早速ワークを出して、「ここ教えて!」と言ってくるのであった。