園「重たいから置いていきなさい」
さすがに二つのキャリーケースを持っていこうとして、全員に止められた。園田さんに見送られ大きな門を出ると、前を歩く善さんが振り返って目が合う。
善「灯早ちゃんと大学行けるの、嬉しい」
〝隣歩いてよ!〟と肩を組まれて引っ張られ、櫂くんと善さんに挟まれる。愛想の良さは健在で、肩をすくめて嫌がる私に目もくれず、にこにこしている。
櫂くんの方を見るも、わざとなのかそっぽを向いていて、助けを求めてギリギリ手が届きそうな袖を引っ張ろうと手を伸ばしかけた時、善さんの手がズボンに触れた気がした。
特に気にも留めなかったけど、昨日櫂くんが連絡先を必ず欲しがると言っていたのを思い出して、櫂くんに伸ばしかけていた手を引っ込めてズボンのポケットを触る。
「…ない」
善「スマホ?」
私が取られたことに気づいて善さんを睨むと、手には私の携帯があって、取り返そうと手を伸ばすと、抵抗もなくすぐに奪えた。弄ばれたようで、気が抜けない。次は奪われないように対策しないと。
櫂「中身確認しとけよ」
「中身?」
取られていたのは数秒で、確認するほどでもない。でも櫂くんの表情はふざけていなかったので、不安になってロックを解除する。
「…交換されてる。どうやって?」
連絡先には善さんの名前が追加されていて、それを確認した瞬間、トーク画面に受信を知らせる通知が表示され、〝よろしく〟のスタンプが送られてきていた。
相手は見なくても分かる、隣でヘラヘラ笑っている人。善さんの表情と同じ、ニヒルな顔のスタンプが、この上なく腹が立つ。



