「慰めてくれるの?」
櫂「このままじゃ、俺が泣かせたみたいに見えるだろ」
「…泣かせたの、櫂くんだよ」
櫂「いや、俺じゃないし」
ツンデレのツンしかこない返事に、櫂くんの胸で大泣きする予定は消えた。揶揄ってみようと櫂くんのお腹を突くと、〝おい〟と呆れを含んだ怒りの声とともに肩を押された。
櫂「泣かないなら離れろよ」
「居心地良くて」
櫂「俺のここは巣じゃねぇから」
櫂くんの胸が巣というワードセンスが独特でツボにハマってしまい、吹き出すように笑った。そんな私を見て櫂くんもつられていて、声を出して笑うところを初めて見たなと思うと同時に、目尻にできた笑い皺も相まって、私の前で見せてくれた笑顔に心が明るく騒いだ。
櫂「入るか」
「うん」
キャリーケースを二つ持ってくれて、櫂くんの後ろをついて、首を折らないと先端が見えないほど高い門を通る。両サイドに構える花には、雲の隙間から見えたほんの少しの青空が、花びらについた水滴に反射していた。
扉を開けてもらい、〝お先にどうぞ〟と譲ってもらった横を、腰を曲げてすり足で中に入る。小上がりには園田さんがこちらを見て正座していて、何があったのか知っているようで、遠慮の視線を感じる。
園「大変だったね…。部屋、好きに使ってくれて良いから」
「ご迷惑おかけします」
園「迷惑じゃないから!園田さん、嬉しい。櫂、部屋に案内してやりなさい」
櫂「おう」



