陽キャのイケメンたちは地味で目立たない私に惚れたらしい




どんよりとした分厚い雲が空を覆っていて、今にも雨が降りそうな湿気を帯びた匂いがする。下を向いたまま、ゴロゴロとキャリーケースを引きずる音を響かせて、通ってきた同じ道を戻る。


遠くにポツンと立つ細い人が見えると、すぐに櫂くんだと分かった。もやしのようなひょろっとした体格で、あの豪邸の近くに立っている人と言えば櫂くんしかいない。駆け足で近づくと、キャリーケースに足を取られて転けそうになる。




「焦るな、私…」




ゴロゴロという鈍い音に反応してこちらを向いた櫂くんは、もたれかかっていた門から背中を外すと、両ポケットに手を突っ込んで仁王立ちで私をじっと見る。目の前で立ち止まり、何も言わずに首だけを折ってお辞儀をすると、鼻で笑われた。




櫂「徘徊女子」


「当ってるけど、その言い方やめて」




自分から親を半分捨てたようにして家を出たのに、孤独だけは強くて。だからこそ、近くに人がいる安心感が一層あって、鍵をしていた感情が一気に膨れ上がって溢れ落ちた。


声は喉の奥にしまって、溢れたモノは拭って隠した。でももう見られていたから、バレている。




「ごめんごめん。家出て自由なんだって思ったら、嬉しくて」




半分本当、半分嘘のことを言った。自由になれたとは思った。でも嬉しくはない。今までやってきた家族は、何で保たれていたのか。崩れる寸前だったのを、海外赴任をきっかけに私が完全に壊した。その辛さや、壊した責任と後悔が全面にある。


下唇を噛んで出てくる涙を堪えていると、櫂くんが一歩私に近づく。何か言われるのかと見上げて櫂くんを見ると、手が後頭部にまわり胸に引き寄せられた。すとんとハマった胸は、体格がもやしの割に筋肉質で温かい。