立ち上がってトイレを出ると、扉の目の前には両親がいて突然動き出した私に驚いている。
「友達の家に行くから」
「明日までは居れるのよ?」
「明日には追い出される家のフローリングで寝るの?」
「お父さんもお母さんも、明日には外国に行っちゃうのよ?」
「勝手に決めて追い出すような人と、話すことなんてないから」
部屋にあったキャリーケースを掴んで玄関に向かうと、革靴とヒールに挟まれた汚いスニーカーが目に入る。間にねじ込まなきゃ良かった。他人の修羅場を止めようと、おせっかいで割って入った気分。
「次、いつ頃帰ってくる予定なの」
「え、あ、そうだな…。一応二年は常駐って言われてるけど」
「そう…。別にずっと居ても良いんじゃない。その方がお父さんも、気まずくなくて良いでしょ」
「灯早!お父さんにそんな言い方!」
「だってそうでしょ。お父さん、私に気を遣ってるじゃん。何話せば良いか分かんないみたいだし、私がいない方がお父さんも楽しいでしょ。二人の邪魔はしないから。お金だけは、送ってほしいけど…」
「それは…、ちゃんと送る。ごめんな、灯早」
お父さんの〝ごめん〟が、私がいない方が良いことへの肯定に聞こえて、嘘でも弁解が欲しかったと期待してしまった。お母さんの制止も無視して玄関の扉を開けて外に飛び出す。



