櫂「喉乾いた」
「…あ、あそこに自販機ありますよ」
櫂「飲む?」
「良いんですか?」
櫂「良いよ」
ほら、また優しくする。どうせならとことん優しくしてもらおうと、ペットボトルの乳酸菌飲料を指さす。〝遠慮がなくて清々しいわ〟と言いつつも、それを買ってくれるみたい。この人、本当に何なんだろう。私のこと、どう思ってるんだろう。
櫂「灯早はさ…」
「えっ?」
ガチャンと音を立てて飲み物が落ちてくると同時に、櫂さんが私の名前を呼び捨てで呼んだ。ギュッと胸が締め付けられて心臓が飛び跳ねたけど、きっと飲み物が落ちてきた音にびっくりしたからだと、言い聞かせた。
櫂「何で俺にも善にも、敬語なの」
「それは、何となく…」
櫂「何となくなら、タメで良いんじゃね。それに名前も呼び捨てで良いし。何か堅苦しくてうざい」
「最後のうざいは余計だけど!名前は…、さすがに呼び捨ては厳しいです」
櫂「じゃあ好きに呼べ」
差し出されたペットボトルを受け取り、早速蓋を捻って一口飲む。
「ありがとう」
櫂「どうも」
隣を見ると、水を持っていた。私が買ってもらった飲み物よりも安くて、ほんの少し申し訳なく思う。嫌がらずに買ってくれたから、ありがたく飲むけど。
また二人並んで歩きだした帰り道。気になることを聞いてみることにした。



