何の前触れもなく家に呼ぶって、どういう誘い?しかも家に誘うなら、上から目線の投げやりじゃなくて、もう少し可愛げを乗せてもらわないと。まぁ、そんなことを櫂さんに求めても意味ないけど。
「え、嫌です」
頭で考える前に口が先に出た。
櫂「何で」
「嫌だから。てか、何の用事ですか?」
櫂「勘違いするなよ。じじいが呼んでるから言ってんだよ」
「じじい…?」
櫂「寮の管理人」
「…園田さん?あ、それなら行きます」
園田さんに呼ばれたんなら、喜んで行きます。最初からそう言ってくれたら良いのに。櫂さんが勘違いするような言い方するから。声には出さず目で訴えると、〝俺は悪くない。行くぞ。〟と察して頂けたようで、反論をもらった。
先に歩きだした櫂さんを追いかけて小走りで横に並ぶと、ちらっとこちらを見てすぐに前を向く櫂さん。背が高い分歩幅が大きくて、同じ速度で歩けない。たまに小走りで合わせていると、急に櫂さんの歩く速度が落ちて、足並みが揃った。
櫂「お前、ちっさいから歩くの遅い」
「お前じゃないですー。それと、歩くのは櫂さんが早すぎるんですよ」
櫂「あっそ」
文句を言いながらも、ちゃんと合わせて歩いてくれるところ、優しいんだよな。たまに出てくる優しさは何なんだろう。
特に会話もないままカラスの鳴き声だけが響き、久しぶりの人がいない静けさの中、櫂さんが突然足を止めた。



