「花、好きですか?」
目を輝かせて眺めていると、この花壇の管理をしているという人に声をかけられた。白髪混じりで、いかにも穏やかそうな雰囲気を醸し出した、おじさん。
手にはスコップを持って、ズボンの膝部分には土を付けて、顔にも乾いた土が付いている。まさに今、植え替えをしてくれているということか。少し離れたところに目をやると、カゴにたくさんの花の苗と、小袋の肥料が乱雑に置かれている。
「はい、好きです。でもここにある花は名前の知らないものが多いので、興味があります」
「そうでしょ?わざと珍しい花ばかり取り寄せて、植えてるからね」
「何故ですか?」
「珍しかったら、ここのみんなが足を止めて見てくれるでしょ。でも実際見てもらえてるかは、分からないけどね」
苦笑いのおじさんの苦労、今ここにいる人たちは、多分知らない。景色は、その人が興味を持たないと視界の端で流れていくだけ。当たり前の景色の裏の苦労なんて、誰にも気づいてもらえないくらい小さいことなんだよな。
「…私はっ、ちゃんと見てます!綺麗だなって思います!」
「ははっ、そうだね。ありがとう。君みたいな子は、この大学で探してもいないだろうね」



