甘いものをくれた園田さんならと選んだ、私が大好きな洋菓子店のカステラ。甘味は少なくてしっとりしている、優しくてほっとする味。園田さんにも食べてほしかった。
「遠慮なく、もらっちゃうよ?」
「ぜひ!食べてください」
じゃあ、私はこれで。と言おうとすると、腕を掴まれて強制的に中に入らされる。
「良いところに来てくれた。花の植え替え、手伝って」
「植え替え?」
返事も聞かず、どんどん中に入っていき、玄関の前に置かれた園芸用品に目が止まる。キラキラとした目で、何を言ってくるのかと思いきや。
「ここ一帯、夏に咲く花に替えたくて」
「…ここ一帯?結構な広さですね」
「反対はもう少し春の花のままで、夏の中間になったら秋の花を植える」
玄関までの道の両側に咲く花の量は、家庭で植える比じゃない。その反対側だけでもすごい量なのに。園田さん一人では出来なさそうだし、久しぶりに土を触ってみたかったし、園田さんの頼みなら受けようかな。
「お供します」
「よし来た!」
すでに二つずつ用意されていた園芸用品を持たされて、園田さんと二人で植え替えをすることになった。
「いつも一人で植え替えをしてるんですか?」
「いやいや、そんなの一人じゃできないよ。悠馬っていう、もう一人この寮に住んでるやつがいて、そいつが手伝ってくれてるよ」
「悠馬、さん。お花、好きな方なんですか?」
「ううん。無理やり手伝いさせてる。だって、櫂も善もしてくれないんだもん」



