善くんに話を聞いてもらおうとしたけど、自分の心の喪失感をまだ認めたくなくて、黙って部屋へ戻ることにした。息ができないくらい苦しい。ずっと近くにいて、付き合うまではいかなくてもお互いに大事な存在だと思っていた。私の思い上がりだったのかな。
でも今の関係で満足して、先に進まなかったのは私自身。玲奈も状況を知らないし、付き合っていないのも事実で、誰と付き合うか選ぶのは告白された櫂くん。私が先に櫂くんに伝えていたら、今頃隣で笑っていたのは私かもしれない。
善「ちょっと、泣いてるじゃん」
善くんの横を通り過ぎようとすると、腕を掴まれた。どうやら泣いていたらしい。自分でも気づかなかったけど、頬は冷たくて触ると確かに涙が流れていた。
「…泣いてない」
善「いやいや、鼻声だし目も赤い。温かい飲み物淹れるから。キッチン行こ」
湯気の立つ温かいほうじ茶を淹れてもらい、何口か飲んだら衝動的な悲しみからは少し落ち着いた。涙もおさまって一息ついた時、ポケットで携帯が何度か震える。櫂くんか玲奈か。どちらから来ても見たくないので、通知だけちらっと見ると、お母さんからだった。食い入るように携帯を覗き込む。
メールを送ってから返事がなかったから、多分その返事。三件ほど通知が来た一つに、〝誕生日おめでとう。これだけ最後に言わせてね〟とあり、今日が自分の誕生日だと気づかされた。よりによって今日。



