「私も、善くんのおかげで気づけたことがあったの。今の私には必要ないものにしがみついてたって、今日の善くんを見てて思ったから、さっきお母さんにお別れのメール送った。ちゃんと前に進まなきゃね」
善「え!?大変だったのは聞いたけど、そこまでして大丈夫?僕は会わないって決めたけど、灯早ちゃんまで同じようにしなくても…」
「ううん。私には櫂くんも善くんも、園田さんもいるから」
〝そっか〟そう言って、またオムライスを大口で頬張った善くん。私もオムライスを頬張る。今までで一番良い出来。ケチャップライスも程よく甘くて、でも酸味もあって。卵も綺麗に巻けた。善くんと食べるオムライスは、温かくて甘くて心に沁みる。
善「アイス食べない?」
「うん食べる!」
オムライスを食べ終わると、〝今日のお礼にもならないけど〟と、割ってシェアできるアイスをくれた。
「ありがとう」
〝美味しいね〟と顔を見合わせて食べる、穏やかな時間が流れる。今日は善くんの新たな一面を知れた、新鮮な日だったと振り返りながら一口齧ると、アイスを持っていた手を誰かに握られた。
櫂「抜け駆け」
〝あっ〟と声を出す前に、手を握られたままお風呂上がりで髪が濡れている櫂くんに、アイスを齧られた。私の肩に乗り込んでくるように前のめりで来たから、首元に櫂くんの髪から落ちた水滴が当たって、冷たい。
「ちょっと!アイスなら冷凍庫にある!」
櫂「灯早からもらうから、意味があるんじゃん」
齧りに来た距離のままこちらを向くから、思っていた以上に櫂くんの顔が目の前にあって、お風呂上がりの無造作な髪と強く残るシャンプーの香りに、安心感とドキドキが混ざった不思議な感情になった。



