亡国の悪役令嬢、呪われたショタ王子に拾われる

 長居は無用だ。キューちゃんもジッとしているのに飽きてきている。
 わたしたちはさっそく飛び立とうとしたのだが……。
 ライアスが慌てた様子で駆け寄ってきた。

「兄様! 私は王太子を譲る所存で……」
「そんなものには興味がない。あの時、王になろうとした俺はどうかしていたんだろうな」
 いくら引き留めようとしたってムダだろう。
 わたしたちは、新たな冒険が始まることにワクワクしているのだから。

 わたしが揉めているシリウスとライアスを眺めていると、ルルーニャがやってきた。
「ちょっと! わたくしに挨拶もなく行くつもり?」
 ぷくっと頬を膨らませる様子がかわいらしい。

 わたしは少し、ルルーニャに後ろめたさを感じていた。
「ルルーニャ、ごめんなさい。わたしね、シリウスが好きなの」
「ええ、知ってるわ」
 それがどうかしたのかとでも言いたげな口ぶりだ。

「だって……ルルーニャもシリウスが好きなんでしょう?」
「なに言ってるのよ、お馬鹿さんね」
 ルルーニャがわたしの耳元でささやいた。
「わたくしが好きなのは、サミュエルよ」

「ええーっ! そっち!?」
 いろいろ勘違いしていた。
 じゃあ、少年のシリウスに合わせてツインテールで幼い容姿に見せかけているのではなく、ただ単にそういう趣味だっただけだ。
 正直、あまりサミュエルの好みに沿っているとは思えないが、黙っておこう。
「頑張ってちょうだい! 応援しているわ!」
「マリアに言われなくったって頑張るわよ。元気でね」
 わたしたちは笑顔で握手を交わした。

 こうしてわたしとシリウスは、再びキューちゃんの背中に乗ってさらなる旅路へと向かったのだった。