亡国の悪役令嬢、呪われたショタ王子に拾われる

 次に、シリウスがサミュエルを呼んだ。
「サミュエル・マルソー。いまこの時をもって、シリウス第三王子の近衛の任を解く」
 サミュエルは言葉を失った様子で大きく目を見開いている。
「これまでよく仕えてくれた。感謝している。帰りは討伐隊と行動をともにしてくれ。まだ魔獣の残党がいるかもしれないから、よろしく頼む」
「シリウス殿下……」

 この場でいきなり解任されるとは思っていなかったのだろう。
 サミュエルはなんともいえない複雑な表情で目を潤ませている。
 でも、このあとシリウスがやろうとしていることを考えれば、ここでサミュエルを切り離しておいたほうがいい。
 サミュエルも王城に帰還すればそれを知ることになるだろう。

 寂しそうなサミュエルの背中を見守っていると、後ろから声をかけられた。
「マリア様!」
 フランチェスカが駆け寄ってくる。
「もう発たれると聞きました」
「はい。まだやるべきことが残っていますので」
 わたしはフランチェスカの手を握る。
「ロミオ様とエルゼアの民をよろしくお願いします」
「ええ、お任せください。このたびはありがとうございました。どうぞお元気で」
 手紙を書くと約束して別れの挨拶に替えた。
 
 ひと通りの挨拶をすませると、わたしはシリウスとともにキューちゃんの背中に乗った。
「さあ、思いっきり飛んでいいぞ」
「キュウゥゥン!」
 キューちゃんが任せておけといわんばかりに翼を広げる。

「戦乙女様! またお会いできますよね」
「ぜひ剣の手合わせを!」
 隊員たちが名残惜しそうに手を振っている。
 きっとシリウスの正体をまだ知らないのだろう。知っていたら、わたしではなくシリウスを引き留めようとしたはずだ。

「人気者じゃないか」
 シリウスがおもしろくなさそうな顔で、そんな隊員たちを睨みつける。
「あら、人気を奪っちゃってごめんなさい」
「ちがう、妬いているだけだ。マリアは俺だけのマリアだからな」

 シリウスがポンと首筋を叩いたのを合図に、キューちゃんが空高く舞い上がる。
 わたしたちは、キューちゃんに乗ってアドラ王城へと帰還したのだった。