そうよ! 早く封印しないといけないわ!
わたしは慌ててシリウスの腕の中からすり抜けた。
「またシリウスの剣を、かんぬき代わりにするの?」
それ以外になにか呪文のようなものを施すのだろうか。
シリウスが肩をすくめる。
「ただ長い棒を差し込めばいいってわけじゃない。封印には強い力を宿した物が必要なんだ」
「じゃあ、どうすれば……」
するとシリウスは、ポケットからなにかを取りだした。
「それは!」
シリウスの長い指が摘まんでいる金色のチェーンは、紛れもなく彼を呪い続けていた腕輪だ。
驚きを隠せないわたしをよそに、シリウスがそのチェーンを両扉の取っ手をつなぐように巻き付けていく。
「引きはがそうとすればするほど、きつく巻き付く執念深い呪物だ。この門の封印にうってつけだろう?」
シリウスがドヤ顔で振り返った。
「すごい! 呪物の再利用ね!」
わたしはパチパチ拍手する。
ここで誰かが爆竹を連続破裂させないかぎり、もうこの封印が解けることはないかもしれない。
キューちゃんが退いても、もう扉はビクともしない。
わたしとシリウスは、キューちゃんの首に抱きついた。
「ありがとう、キューちゃん!」
「さあ、帰ろう。俺たちふたりを乗せられるか?」
「キュウ!」
もちろんだとキューちゃんが胸を張った。
封印をすませて無事に帰還したわたしたちを見て、隊員たちは驚いていたり呆れていたり安堵の表情を浮かべたりと、反応は様々だった。
明るい場所で改めて見るキューちゃんは、とても立派で青い鱗が煌めく綺麗な翼竜だ。
「ずっと気になっていたんだ。大きくなりすぎて鉱山から出られなくなる前に連れ出せてよかった」
「キュウ!」
もとは、偶然拾った卵だったらしい。
孵化したら翼竜で、親と勘違いしたキューちゃんが懐くものだから、そのまま育てていたらしい。
「戴冠式が終わったら迎えに来るつもりだったのに、悪いことをした」
わたしの予想は当たっていたようだ。
「これからどうするの? アドラに連れて帰るの?」
シリウスが首を横に振る。
「一旦は帰るが、こいつを連れて旅に出ようと思う。大陸のどこかに、翼竜と人間が共生している里があることがわかったから」
シリウスは呪いを解く手がかりはないかと、アドラ王城内の古い文献すべてを読破した経験がある。
その作業の中で知ったのだろう。
めでたくキューちゃんと一緒に過ごせることにはなったが、竜は人間よりも遥かに長命だ。
いずれまたひとりぼっちにしないようにとの思いがあるにちがいない。
シリウスの優しさに、胸の奥がじんわり温かくなる。
「じゃあ、わたしも一緒に連れていってちょうだい」
「もちろんそのつもりだ。もう離さないから覚悟するんだな」
甘く笑ったシリウスは、人目もはばからずにわたしを抱きしめる。
サミュエルをはじめ、周りの隊員たちが赤面して目を逸らしている様子にいたたまれなくなったわたしは、シリウスの胸を両手で押した。
「じゃあその前に、やるべきことを早くすまさないとね」
わたしはシリウスを伴って、小さなテントの中へ入った。
そこには後ろ手に拘束され猿ぐつわをされた状態のユザックがいて、傍らには隊長もいる。
殺意をもってわたしを突き落とした事情ならすでに聞いて知っている。
「うふふっ、わたしがこんなにピンピンしていて、さぞや残念でしょうね」
わざと悪役っぽく言うと、ユザックは憎しみを込めた目でわたしを睨みつけた。
「あなたに謝罪してもらう気はないわ。うわべだけの謝罪の言葉で許された気になってもらっても困るもの。せいぜいわたしを恨みつづけてちょうだい」
わたしはユザックの胸倉を掴んで引き寄せる。
「ただし次は容赦しないから、あなたも死ぬ覚悟でかかってくることね」
落とされた時は討伐隊の仲間だと思っていたから、どういうつもりなのかと問うた。
しかし任務が完了したいまは、もう仲間ではない。
殺されそうになったら、こちらも躊躇なく返り討ちにしてやるまでだ。
わたしの殺気を感じ取ったのか、ユザックがブルブル震えだした。
テントを出たわたしを、隊長が追いかけてくる。
「あれでよかったのですか?」
「ええ、かまわないわ。わたしがこうして生きていることが、彼にとって一番悔しいはずだもの」
それに、と付け加える。
「わたしは強いから、どうってことないわ」
隊長はわたしの強さを十分知っている。
だから苦笑するだけで、それ以上なにも言わなかった。
任務中に規律を乱したことに関して、ユザックは相応の罰を受けるだろう。それで十分だ。
わたしは慌ててシリウスの腕の中からすり抜けた。
「またシリウスの剣を、かんぬき代わりにするの?」
それ以外になにか呪文のようなものを施すのだろうか。
シリウスが肩をすくめる。
「ただ長い棒を差し込めばいいってわけじゃない。封印には強い力を宿した物が必要なんだ」
「じゃあ、どうすれば……」
するとシリウスは、ポケットからなにかを取りだした。
「それは!」
シリウスの長い指が摘まんでいる金色のチェーンは、紛れもなく彼を呪い続けていた腕輪だ。
驚きを隠せないわたしをよそに、シリウスがそのチェーンを両扉の取っ手をつなぐように巻き付けていく。
「引きはがそうとすればするほど、きつく巻き付く執念深い呪物だ。この門の封印にうってつけだろう?」
シリウスがドヤ顔で振り返った。
「すごい! 呪物の再利用ね!」
わたしはパチパチ拍手する。
ここで誰かが爆竹を連続破裂させないかぎり、もうこの封印が解けることはないかもしれない。
キューちゃんが退いても、もう扉はビクともしない。
わたしとシリウスは、キューちゃんの首に抱きついた。
「ありがとう、キューちゃん!」
「さあ、帰ろう。俺たちふたりを乗せられるか?」
「キュウ!」
もちろんだとキューちゃんが胸を張った。
封印をすませて無事に帰還したわたしたちを見て、隊員たちは驚いていたり呆れていたり安堵の表情を浮かべたりと、反応は様々だった。
明るい場所で改めて見るキューちゃんは、とても立派で青い鱗が煌めく綺麗な翼竜だ。
「ずっと気になっていたんだ。大きくなりすぎて鉱山から出られなくなる前に連れ出せてよかった」
「キュウ!」
もとは、偶然拾った卵だったらしい。
孵化したら翼竜で、親と勘違いしたキューちゃんが懐くものだから、そのまま育てていたらしい。
「戴冠式が終わったら迎えに来るつもりだったのに、悪いことをした」
わたしの予想は当たっていたようだ。
「これからどうするの? アドラに連れて帰るの?」
シリウスが首を横に振る。
「一旦は帰るが、こいつを連れて旅に出ようと思う。大陸のどこかに、翼竜と人間が共生している里があることがわかったから」
シリウスは呪いを解く手がかりはないかと、アドラ王城内の古い文献すべてを読破した経験がある。
その作業の中で知ったのだろう。
めでたくキューちゃんと一緒に過ごせることにはなったが、竜は人間よりも遥かに長命だ。
いずれまたひとりぼっちにしないようにとの思いがあるにちがいない。
シリウスの優しさに、胸の奥がじんわり温かくなる。
「じゃあ、わたしも一緒に連れていってちょうだい」
「もちろんそのつもりだ。もう離さないから覚悟するんだな」
甘く笑ったシリウスは、人目もはばからずにわたしを抱きしめる。
サミュエルをはじめ、周りの隊員たちが赤面して目を逸らしている様子にいたたまれなくなったわたしは、シリウスの胸を両手で押した。
「じゃあその前に、やるべきことを早くすまさないとね」
わたしはシリウスを伴って、小さなテントの中へ入った。
そこには後ろ手に拘束され猿ぐつわをされた状態のユザックがいて、傍らには隊長もいる。
殺意をもってわたしを突き落とした事情ならすでに聞いて知っている。
「うふふっ、わたしがこんなにピンピンしていて、さぞや残念でしょうね」
わざと悪役っぽく言うと、ユザックは憎しみを込めた目でわたしを睨みつけた。
「あなたに謝罪してもらう気はないわ。うわべだけの謝罪の言葉で許された気になってもらっても困るもの。せいぜいわたしを恨みつづけてちょうだい」
わたしはユザックの胸倉を掴んで引き寄せる。
「ただし次は容赦しないから、あなたも死ぬ覚悟でかかってくることね」
落とされた時は討伐隊の仲間だと思っていたから、どういうつもりなのかと問うた。
しかし任務が完了したいまは、もう仲間ではない。
殺されそうになったら、こちらも躊躇なく返り討ちにしてやるまでだ。
わたしの殺気を感じ取ったのか、ユザックがブルブル震えだした。
テントを出たわたしを、隊長が追いかけてくる。
「あれでよかったのですか?」
「ええ、かまわないわ。わたしがこうして生きていることが、彼にとって一番悔しいはずだもの」
それに、と付け加える。
「わたしは強いから、どうってことないわ」
隊長はわたしの強さを十分知っている。
だから苦笑するだけで、それ以上なにも言わなかった。
任務中に規律を乱したことに関して、ユザックは相応の罰を受けるだろう。それで十分だ。



