わたしは翼竜の首に腕を回して抱きついた。
「もうすぐシリウスがここへ来ると思うわ」
「キュウゥゥン!」
ひときわ甲高く鳴いた翼竜は、首をグイッと持ち上げてわたしを背中に乗せた。
翼をパタパタ動かしてダンスを踊るような仕草で浮かれている。
シリウスに会えると聞いて、よほどうれしいのだろう。
このまま飛び上がって元の場所まで運んでもらえないだろうか。
思わず期待してしまったが、見上げてすぐに無理だと気づいた。
穴が小さくて翼を広げた状態で通り抜けられそうにない。
「ねえ、キューちゃん」
「キュ?」
勝手に名付けて呼んでみたが、自分のことだとわかったらしい。
「外に出られる道を知らない?」
討伐隊は門を目指して最短ルートを辿っていたけれど、この洞穴にはたくさんのルートがあるはずだ。
「待っていないで、わたしたちのほうからシリウスを迎えにいきましょうよ。きっと驚くわ」
「キュウッ!」
俄然張り切りだしたキューちゃんは、ものすごい勢いで駆けだした。
「ひゃあっ! すごい!」
わたしは首に掴まるだけで精いっぱいだ。
疾走するキューちゃんは、魔獣たちをものともせずに蹴散らし追い抜いていく。
強い、強すぎる!
何十年も鉱山内で、存在すら確認されないほどおとなしく過ごしていたとは思えない強さだ。
翼竜を従えた時点で勝ちが確定するのではなかろうか。
ただし、わたしとキューちゃんは主従関係ではなく、シリウスが好きな同胞だ。
キューちゃんがシリウスに寄せる好意を利用して脱出しようとしている件に関しては、どうか許してもらいたい。
わたしは何十年もこんな暗闇で待ちつづけることはできないのだから。
あとは、しっかり掴まっていさえすれば外へ出られるだろう。
安心しきって頬を緩ませながら乗っていたら、やがて開けた場所に出た。
ランタンで照らしてみたら、左右両開きに開け放たれた分厚くて大きな扉がある。
ちょうどそこから魔獣が出てくるところだった。
これは——!!
しかしキューちゃんは、そんなことはおかまいなしに通り過ぎようとする。
「待って! キューちゃん、止まって!」
わたしは慌てて大きな声を出した。
「キュ?」
ピタリと止まったキューちゃんは、どうしたの?と言いたげに長い首を回して振り返る。
「あれ! あの扉を閉じないといけないの。前にもシリウスと一緒に閉じたことがあるでしょう?」
「キュウッ!」
ここが討伐隊の目標としていた門にちがいない。
偶然にも辿り着いてしまったからには、閉じずに帰るわけにはいかない。
門から出てきた頭が三つある犬が、わたしを認めて姿勢を低くする。こちらへ飛びかかる気かもしれない。
しばし睨み合い、三頭犬が動いた瞬間、キューちゃんがいとも簡単に鉤爪の一撃で薙ぎ払った。
壁まで吹っ飛んで叩きつけられた三頭犬が、ヒイヒイ鼻を鳴らしながら門の内側へと逃げ帰っていく。
「キューちゃん、すごいわ。わたしより遥かに強いわね!」
魔獣よりも人間であるわたしに与してくれるとは、こんなにも頼もしい味方はいない。
さらに魔獣が出てこないうちに、一刻も早く閉じたほうがいい。
わたしはキューちゃんの背中から飛び降りた。
「左右同時に閉めるわよ。キューちゃんは、そっちをお願い」
「キュウ」
わたしたちは両側からそれぞれの扉を押した。
もっと重たそうに見えたが、滑らかに動いてあっさり閉まる。
「やけに、あっけなかったわね……?」
あとは、まだ洞穴内に残っている魔獣を倒せば任務完了ということでいいだろうか。
肩透かしをくらったような気分で扉から手を放そうとした時、内側から力が加わり扉が開きそうになった。
「わわわっ! ダメ! 開けようとしないで!」
向こう側から魔獣が押しているのだろう。
「キューちゃん、開かないように押さえて!」
「キュウ!」
任せておけといわんばかりに、キューちゃんが扉の前に居座った。
「もうすぐシリウスがここへ来ると思うわ」
「キュウゥゥン!」
ひときわ甲高く鳴いた翼竜は、首をグイッと持ち上げてわたしを背中に乗せた。
翼をパタパタ動かしてダンスを踊るような仕草で浮かれている。
シリウスに会えると聞いて、よほどうれしいのだろう。
このまま飛び上がって元の場所まで運んでもらえないだろうか。
思わず期待してしまったが、見上げてすぐに無理だと気づいた。
穴が小さくて翼を広げた状態で通り抜けられそうにない。
「ねえ、キューちゃん」
「キュ?」
勝手に名付けて呼んでみたが、自分のことだとわかったらしい。
「外に出られる道を知らない?」
討伐隊は門を目指して最短ルートを辿っていたけれど、この洞穴にはたくさんのルートがあるはずだ。
「待っていないで、わたしたちのほうからシリウスを迎えにいきましょうよ。きっと驚くわ」
「キュウッ!」
俄然張り切りだしたキューちゃんは、ものすごい勢いで駆けだした。
「ひゃあっ! すごい!」
わたしは首に掴まるだけで精いっぱいだ。
疾走するキューちゃんは、魔獣たちをものともせずに蹴散らし追い抜いていく。
強い、強すぎる!
何十年も鉱山内で、存在すら確認されないほどおとなしく過ごしていたとは思えない強さだ。
翼竜を従えた時点で勝ちが確定するのではなかろうか。
ただし、わたしとキューちゃんは主従関係ではなく、シリウスが好きな同胞だ。
キューちゃんがシリウスに寄せる好意を利用して脱出しようとしている件に関しては、どうか許してもらいたい。
わたしは何十年もこんな暗闇で待ちつづけることはできないのだから。
あとは、しっかり掴まっていさえすれば外へ出られるだろう。
安心しきって頬を緩ませながら乗っていたら、やがて開けた場所に出た。
ランタンで照らしてみたら、左右両開きに開け放たれた分厚くて大きな扉がある。
ちょうどそこから魔獣が出てくるところだった。
これは——!!
しかしキューちゃんは、そんなことはおかまいなしに通り過ぎようとする。
「待って! キューちゃん、止まって!」
わたしは慌てて大きな声を出した。
「キュ?」
ピタリと止まったキューちゃんは、どうしたの?と言いたげに長い首を回して振り返る。
「あれ! あの扉を閉じないといけないの。前にもシリウスと一緒に閉じたことがあるでしょう?」
「キュウッ!」
ここが討伐隊の目標としていた門にちがいない。
偶然にも辿り着いてしまったからには、閉じずに帰るわけにはいかない。
門から出てきた頭が三つある犬が、わたしを認めて姿勢を低くする。こちらへ飛びかかる気かもしれない。
しばし睨み合い、三頭犬が動いた瞬間、キューちゃんがいとも簡単に鉤爪の一撃で薙ぎ払った。
壁まで吹っ飛んで叩きつけられた三頭犬が、ヒイヒイ鼻を鳴らしながら門の内側へと逃げ帰っていく。
「キューちゃん、すごいわ。わたしより遥かに強いわね!」
魔獣よりも人間であるわたしに与してくれるとは、こんなにも頼もしい味方はいない。
さらに魔獣が出てこないうちに、一刻も早く閉じたほうがいい。
わたしはキューちゃんの背中から飛び降りた。
「左右同時に閉めるわよ。キューちゃんは、そっちをお願い」
「キュウ」
わたしたちは両側からそれぞれの扉を押した。
もっと重たそうに見えたが、滑らかに動いてあっさり閉まる。
「やけに、あっけなかったわね……?」
あとは、まだ洞穴内に残っている魔獣を倒せば任務完了ということでいいだろうか。
肩透かしをくらったような気分で扉から手を放そうとした時、内側から力が加わり扉が開きそうになった。
「わわわっ! ダメ! 開けようとしないで!」
向こう側から魔獣が押しているのだろう。
「キューちゃん、開かないように押さえて!」
「キュウ!」
任せておけといわんばかりに、キューちゃんが扉の前に居座った。



