亡国の悪役令嬢、呪われたショタ王子に拾われる

 食事を出してもらい、小さなテーブルでフランチェスカとふたりで食べる。
 野菜スープにパンとチーズという質素なものだが、十分ありがたい。

「こちらへ来て早々、大変なことになってしまいましたね」
 ロミオに嫁ぐことがきまり、同行して旧エルゼア王国に行った途端の魔獣騒動だ。
 散々な目に遭っていると怒っているか、それとも悲嘆に暮れているのではないだろうか。

 しかし、フランチェスカはにっこり笑って首を横に振った。
「最初のうちはロミオ様とギクシャクしていたのですが、今回のことで彼との距離がグッと近づきましたのよ。むしろ魔獣に感謝したいほどです」
「まあ、なんて素晴らしいのかしら!」
 なかなか肝が据わっている。

「ところで、ロミオ様の足のケガは魔獣との戦闘で?」
 松葉杖をついていたのが気になる。彼が勇猛果敢に魔獣と戦う姿は想像できない。
 剣術の稽古だってサボりまくっていたと記憶しているためだ。
 エルゼアの民の命を預かる立場になったとはいえ、彼の性根が突然変わるとも思えない。

 するとフランチェスカはクスクス笑った。
「ちがうのです。ここだけの話、彼は大きな魔獣を見て逃げる途中で足をくじいてしまったのですよ。でも周囲からは、魔獣と一騎打ちをした名誉の負傷だと勘違いされていて……」
「あらぁ……」
 あまりにもロミオらしいみっともなさだ。
 おまけに、ビビリ散らかして転んだだけですと真実を告白するのは、彼のプライドが許さないのだろう。
 
 わたしの元婚約者がすみませんと謝罪するのはちがうだろう。
 本当にどうしようもないクズですね!と、こき下ろすのもちがう気がする。
 わたしはどう返事をすれのが正解かわからず、ぎこちない動作でパンをかじった。

 ロミオの情けなさを目の当たりにして、フランチェスカはさぞや呆れたことだろう。
 ところがフランチェスカは、頬をほんのり赤く染めて言った。
「お可愛らしい人だと思ったのです」
 えぇっ? そうなの!?
 予想外な言葉に、思わずパンを取り落とす。

「わたくしが守って差し上げなければと、強く思いましたのよ」
 恥じらうように言って微笑むフランチェスカは、まさに恋する乙女だ。
 そういう趣味という解釈で合っているだろうか。
 だったら、ロミオのパートナーとしてこれほどの適任者はほかにいない。
 きっとこれからも、ロミオをおだてたり励ましたりしながら上手くリードしてくれるにちがいない。

「フランチェスカ様、どうぞエルゼアの民をよろしくお願いします!」
 わたしは胸を熱く震わせながら、フランチェスカの手をガシっと握りしめた。
 
 魔獣の封印さえ終われば、明るい未来が待っているはずだ。
 フランチェスカ様のためにも頑張らないといけないわ!
 わたしは決意を新たにしたのだった。