亡国の悪役令嬢、呪われたショタ王子に拾われる

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 アドラの騎士たちとともに王城を出立して五日が過ぎようとしている。
 当初は全員が、わたしに不信感を募らせていた。
 王太子直々の命令とあっては従うほかないが、お嬢様の遊びではないのだと思われたのだろう。

『お命の保証はしかねます。我々の邪魔はなさいませんようお願いいたします』
 騎士団で要職を務めているという隊長の言葉は丁寧だったが、足手まといになったら容赦なく置いていくとでも言いたげな凄みがあった。
『そのセリフ、そっくりそのままお返しするわ』
 嫌われるのには慣れているからどうってことはない。
 勝ち気な笑みを浮かべるわたしを、隊員たちは呆れた目で見つめていたのだが——。

 魔獣との戦闘が始まると、皆の態度が一変した。
 わたしが弓で正確に魔核を射抜き、大きな牛タイプも空から急降下してくる鳥タイプの魔獣も一発で倒していったためだ。
 魔獣とまともにやり合おうとしていた彼らは、信じられないものでも見るかのような視線をこちらへ向けていた。
 
『魔獣の魔核は、額、喉、胸、へそにあります! 金色に光っているところを狙って!』
 シリウスの受け売りだが、彼らにお手本を見せる形になったことで、あっという間に信頼を得た。
 戦争が終わってからも鍛錬を欠かさず行ってきた手練れの騎士たちだと聞いている。
 わたしの動きを見て、ただものではないとすぐに理解してくれたようだ。

 まだ、わたしを疑わしげに見つめて遠巻きにしている騎士もいる。
 その数名が、魔獣討伐の任務をきちんとまっとうしてさえくれれば、わたしを嫌っていたってかまわない。
 わたしは全員に好かれて和気あいあいと親交を深めたくてここにいるわけではない。

『魔石鉱山の中は魔法厳禁です。だからいまのうちから、魔法に頼らず魔核への一撃で倒せるよう練習しておいてください』
 そんな指南もしているうちに、誰が最初に言い出したのか「戦乙女(いくさおとめ)」という二つ名で呼ばれるようになった。

「戦乙女様、もうすぐ国境を越えます」
 マリアと呼んでほしいと何度言っても聞く耳を持たないから、もうあきらめて好きなように呼ばせている。
 一カ月ほど前、馬車でシリウスとともに通ってきた道を、今度は騎士たちと馬に乗って引き返す。
 
 わたしはふと、左腕に巻いたピンクのスカーフに目を落とした。
 出立前にルルーニャが結んでくれたものだ。
『無事に戻ってこなかったら許さなくてよ』
『任せてちょうだい。魔獣なんてギッタンギッタンにしてやるわ!』
『あなたって本当にやばいわね』
 呆れた様子で笑いながらも、ルルーニャの目は不安げに揺れていた。
 
 この位置からアドラ王城は見えないけれど、それでも後ろを振り返る。
 シリウスはいまどうしているだろう。目を覚ましただろうか。傷が悪化していないか。
 爆竹で呪いは解けただろうか……。
 最後に見た姿は、青白い顔で眠る大人の彼だった。
 その頬にそっと唇を寄せて出立の挨拶をしてきた。

 シリウス、待ってるからね!
 わたしは向き直り、馬の腹を蹴った。