シリウスが右手の拳で机をドンと叩いて立ち上がる。
「どういうことだ」
呻くように絞り出された低い声にたじろぎながらも、サミュエルは報告すべきことを口にした。
「ライアス殿下は、魔獣の封印が解けてしまったのは自分の失態だと認めて討伐部隊を派遣されました。マリア様はその部隊に同行されておいでです」
「なんで……」
シリウスは足の力が抜けたように、ストンと椅子に腰を下ろした。
「母国の民を守りたいからと、自ら志願されました」
魔獣の出現場所は魔石鉱山だろうと大方の予想はついていた。その理由も。
火薬の回収に行かせて魔法を使ったのだろうと。
現在「魔石鉱山」と呼ばれている山はもともと洞穴があり、魔獣たちはそこをねぐらにしていた。
シリウスが英雄王子として魔獣と戦っていた昔は、その洞穴内で魔法を使ってはならないのは常識だった。
魔獣の封印に成功したことや、山がエルゼア王国に位置していたこともあり、知識の継承が徐々におろそかになっていたのだろう。
なぜそこまで焦って火薬を回収しに行かせたのか。
解呪させないためという動機は伏せて、旧エルゼアの民が再び火薬で過ちを犯さぬようにするためだったと、もっともらしい言い訳をするにちがいない。
シリウスは、ライアスの軽率な行動が許せなかった。
だからカッとなって、マリアが聞いているのもおかまいなしに怒鳴りつけたのだ。
己の冷静さを欠いた行動を反省しても遅い。
話を聞いて察したマリアは、居てもたってもいられず魔獣を討つと決心して旅立ったのだろう。
「どうせ『わたしは強いから大丈夫』とか言ったんだろうな」
「おっしゃる通りです」
シリウスには、マリアが得意げに顎をツンと上げて胸を張る姿がありありと想像できた。
周りが危ないからやめろと止めても、あのおてんばなマリアが聞くはずもない。
ハッと笑って横を向くシリウスがボソッと呟く。
「そばにいてくれるんじゃなかったのか」
その横顔は、ひどく傷ついた少年のようだ。
呟きが聞こえたのかはわからないが、サミュエルがひときわ明るい声で告げる。
「マリア様から伝言がございます」
「え?」
シリウスが弾かれたように視線をサミュエルに戻した。
サミュエルは「んんっ」と咳払いすると、腰に手を当てもう片方の手で長い髪を払うような仕草をする。
「早く呪いを解いて追いかけてきてちょうだい。待っているから」
マリアの物真似を見せられたシリウスは、眉根をきつく寄せた。
「ちっとも似てない」
しかしサミュエルがハハッと乾いた笑いを漏らすと、つられて笑った。
「わがままな悪女様だな」
冗談めかして肩をすくめているが、シリウスの口元はうれしそうに弧を描いている。
「だったらなおさら、ライアスをすぐに呼んでくれ。早く呪いを解かないといけない」
するとサミュエルは、心得ているといわんばかりに頷いた。
「マリア様は、ライアス殿下からすでに火薬を受け取っています。その火薬を使い、爆竹という大きな音の出る道具の作り方を教えていただきました」
しばし黙って瞳を揺らしていたシリウスが両手で顔を覆う。
彼女がライアスとどのような交渉をしたのかわからないが、そこまで準備した上で旅立ったのだ。
そのしたたかさの中にたしかな情を感じて胸が震える。
「マリア……好きだ」
「それは、マリア様に直接お伝えください」
サミュエルが笑みを深くした。
「どういうことだ」
呻くように絞り出された低い声にたじろぎながらも、サミュエルは報告すべきことを口にした。
「ライアス殿下は、魔獣の封印が解けてしまったのは自分の失態だと認めて討伐部隊を派遣されました。マリア様はその部隊に同行されておいでです」
「なんで……」
シリウスは足の力が抜けたように、ストンと椅子に腰を下ろした。
「母国の民を守りたいからと、自ら志願されました」
魔獣の出現場所は魔石鉱山だろうと大方の予想はついていた。その理由も。
火薬の回収に行かせて魔法を使ったのだろうと。
現在「魔石鉱山」と呼ばれている山はもともと洞穴があり、魔獣たちはそこをねぐらにしていた。
シリウスが英雄王子として魔獣と戦っていた昔は、その洞穴内で魔法を使ってはならないのは常識だった。
魔獣の封印に成功したことや、山がエルゼア王国に位置していたこともあり、知識の継承が徐々におろそかになっていたのだろう。
なぜそこまで焦って火薬を回収しに行かせたのか。
解呪させないためという動機は伏せて、旧エルゼアの民が再び火薬で過ちを犯さぬようにするためだったと、もっともらしい言い訳をするにちがいない。
シリウスは、ライアスの軽率な行動が許せなかった。
だからカッとなって、マリアが聞いているのもおかまいなしに怒鳴りつけたのだ。
己の冷静さを欠いた行動を反省しても遅い。
話を聞いて察したマリアは、居てもたってもいられず魔獣を討つと決心して旅立ったのだろう。
「どうせ『わたしは強いから大丈夫』とか言ったんだろうな」
「おっしゃる通りです」
シリウスには、マリアが得意げに顎をツンと上げて胸を張る姿がありありと想像できた。
周りが危ないからやめろと止めても、あのおてんばなマリアが聞くはずもない。
ハッと笑って横を向くシリウスがボソッと呟く。
「そばにいてくれるんじゃなかったのか」
その横顔は、ひどく傷ついた少年のようだ。
呟きが聞こえたのかはわからないが、サミュエルがひときわ明るい声で告げる。
「マリア様から伝言がございます」
「え?」
シリウスが弾かれたように視線をサミュエルに戻した。
サミュエルは「んんっ」と咳払いすると、腰に手を当てもう片方の手で長い髪を払うような仕草をする。
「早く呪いを解いて追いかけてきてちょうだい。待っているから」
マリアの物真似を見せられたシリウスは、眉根をきつく寄せた。
「ちっとも似てない」
しかしサミュエルがハハッと乾いた笑いを漏らすと、つられて笑った。
「わがままな悪女様だな」
冗談めかして肩をすくめているが、シリウスの口元はうれしそうに弧を描いている。
「だったらなおさら、ライアスをすぐに呼んでくれ。早く呪いを解かないといけない」
するとサミュエルは、心得ているといわんばかりに頷いた。
「マリア様は、ライアス殿下からすでに火薬を受け取っています。その火薬を使い、爆竹という大きな音の出る道具の作り方を教えていただきました」
しばし黙って瞳を揺らしていたシリウスが両手で顔を覆う。
彼女がライアスとどのような交渉をしたのかわからないが、そこまで準備した上で旅立ったのだ。
そのしたたかさの中にたしかな情を感じて胸が震える。
「マリア……好きだ」
「それは、マリア様に直接お伝えください」
サミュエルが笑みを深くした。



