亡国の悪役令嬢、呪われたショタ王子に拾われる

 話がしたいと申し出ると、ライアスはあれこれ処理をすませたら必ずと約束してくれた。
 わたしはその間に湯あみで汗を流した。

 ライアスの執務室に呼ばれたのは、夜遅く。
 狩猟大会があんなことになってしまい、ライアスはその事後処理にずっと追われていたようだ。

「お忙しいところこのような時間を作っていただきありがとうございます」
「堅苦しい挨拶はなしだ。座ってくれ」
 促されてソファーへ腰かける。
 メイドが紅茶を淹れて退室していった。
 それを待っていたかのように、ライアスが切り出した。

「きみはもう、シリウスの秘密をすべて知っているんだね」
「はい」
 シリウスが大人の姿になった時、まったく驚かないわたしの態度で気づいたのだろう。
 わたしは素直に頷いた。

「私の知る限り、シリウスはこれまで女性をそばに置いたことがないんだ。まして部外者に秘密を打ち明けるなんて一度もなかった」
「そうだったのですね」
 ライアスが苦笑する。
「ルルに付きまとわれるのも心底嫌そうにしていたし」
 ライアスとルルーニャは母親が同じ兄妹だ。
 だから頼みやすかったのだろう。
 
 彼女の名前が出たタイミングで早速本題に入る。
「ルルーニャ様を利用して、わたしの言動を探っていたのですね。あのイヤリングかしら?」
 
 ライアスは無言のまま肯定するように目を伏せた。
 いつも彼女がつけている金のイヤリングが妙に気になっていた。
 あれが音声を記録したり、遠くから盗聴できるような魔道具であったとしてもおかしくはない。ここは魔法大国なのだから。

「ルルを責めないでやってほしい。あの子にはただ『このイヤリングをつけてマリアさんの相手をしてもらえないか』と言っただけだ」
「それでも勘のいいルルーニャは、すべて心得ていたのでしょう?」
 ライアスは観念したようにフッと笑う。
「やはりあなたは、よく人を見ているね。あの子は勘違いされやすいだけで、なかなか聡いところがある」

 知っている。だから舞踏会用として悪趣味なドレスが届いた時に、あれほど憤慨していたのだ。
 誰の差し金かすぐにわかったのだろう。自分の母親、つまり王妃だ。
 嫌がらせとはいえ、あんなにひどいドレスを作らせたなりふりかまわぬ態度もさることながら、そもそもあのデザインがルルーニャの美意識の逆鱗に触れたのだと思う。
 彼女は賢くて純粋な少女だ。
 母や兄の役に立ちたい、自分の恋も成就させたい、でも許せないことだってある。
 手駒のような扱いを受けているのも承知の上で、多くの葛藤を抱えながらわたしに会いに来ていたのだろう。
 王妃もライアスも、ルルーニャにどれほどの重責を担わせているか、なにもわかっちゃいない。