施錠されていたら蹴破ってやろうと思っていたけれど、小屋の扉には鍵がかかっていなかった。
この森が王室直轄区域で普段は厳重に警備されているため、関係者を除き許可なく立ち入ることができないからだろう。
つまりこの小屋も王室のもの。だから「小屋」というわりに、なかなか立派な造りをしている。
小屋に入ってすぐのところに釣り道具が並べられていた。
奥にはテーブルとイス、薪ストーブ、ベッドにもなりそうな大きいソファーと棚にはティーセットもあって、休憩できるようになっている。
炎さえ迫ってこなければ、しばらくここで待機できそうだ。
わたしはシリウスをソファーに座らせた。
「気分が悪くなったりしていない?」
「大丈夫だ」
そう言いながらも、やっぱり顔色が悪い。
「ちょっと待っていて!」
わたしは薪ストーブに火をつけ、棚にあったやかんを掴んで外へ出た。
やかんに沢の水を汲み、小屋の裏側でドクダミの葉を摘んで中へ戻る。
薪ストーブの上にやかんを置くと、ドクダミの葉をよく揉んだ。
「応急処置だけど、ドクダミには止血作用があるのよ」
隣に座り、シリウスの羽織っているジャケットをめくる。
スカーフできつく縛っておいたおかげか、噛み痕からの出血は治まってきている。
しかし今度は腫れがひどい。
沸かしたお湯をハンカチにかけ、シリウスの傷口を綺麗に拭く。
「少し染みるかも。我慢してね」
傷口にドクダミをあて、もう一枚のスカーフで巻いて固定した。
ありがとう、ルルーニャ。あなたのスカーフが大活躍だわ!
無事に帰還できた暁には、うんとお礼を言わなくてはならない。
とても痛いはずなのに泣きごとひとつ言わずにわたしの手当てを見守っていたシリウスが、ふうっと息を吐く。
「噛まれたのが右腕だったら、腕輪の効果でケガをせずにすんだかもな……」
自嘲気味に言うものの、いつもの生意気な態度は鳴りを潜めている。
たしか以前、呪いの腕輪をはめた右腕を切り落とそうと試みたが剣が弾かれたと言っていた。
もしもあの時、シリウスの体の向きがちがっていたら、こんなケガを負わずにすんでいたのかもしれない。
「もしかして、わたしが引っ張らないほうがよかった?」
それとも突き飛ばせばよかったのだろうか。
「いや、マリアが引っ張ってくれた助かった。あれがなければ、腹に噛みつかれていたと思う」
それを想像して、体温がスッと下がったような気がした。
腕ではなくお腹に噛みつかれていたら、もっと大変なことになっていたにちがいない。
シリウスがわたしの肩に頭を載せる。
「少しもたれてもいいか」
熱が上がってきたのかもしれない。
「横になるといいわ」
わたしはシリウスに膝枕をした。
「もしも俺が寝そうになったら……」
「え?」
シリウスがなにやらムニャムニャ言っているが、最後のほうが不明瞭で聞き取れなかった。
ほぼ寝息になっているのに、無理に起こすのも気が引ける。
眠ってしまうと危険だと言いたかったのかもしれない。
座ったまま窓から外を窺っても、炎や煙が迫っている気配はない。
だから少しの間なら大丈夫だろう。
サミュエルの姿も見えないままだ。
首を伸ばして窓の外を見ているうちに、シリウスの頭が妙に重くなった気がする。
視線を下に落としたわたしは叫びそうになった。
シリウスがいなくなり、どういうわけかわたしは大人の男性を膝枕しているではないか。
この森が王室直轄区域で普段は厳重に警備されているため、関係者を除き許可なく立ち入ることができないからだろう。
つまりこの小屋も王室のもの。だから「小屋」というわりに、なかなか立派な造りをしている。
小屋に入ってすぐのところに釣り道具が並べられていた。
奥にはテーブルとイス、薪ストーブ、ベッドにもなりそうな大きいソファーと棚にはティーセットもあって、休憩できるようになっている。
炎さえ迫ってこなければ、しばらくここで待機できそうだ。
わたしはシリウスをソファーに座らせた。
「気分が悪くなったりしていない?」
「大丈夫だ」
そう言いながらも、やっぱり顔色が悪い。
「ちょっと待っていて!」
わたしは薪ストーブに火をつけ、棚にあったやかんを掴んで外へ出た。
やかんに沢の水を汲み、小屋の裏側でドクダミの葉を摘んで中へ戻る。
薪ストーブの上にやかんを置くと、ドクダミの葉をよく揉んだ。
「応急処置だけど、ドクダミには止血作用があるのよ」
隣に座り、シリウスの羽織っているジャケットをめくる。
スカーフできつく縛っておいたおかげか、噛み痕からの出血は治まってきている。
しかし今度は腫れがひどい。
沸かしたお湯をハンカチにかけ、シリウスの傷口を綺麗に拭く。
「少し染みるかも。我慢してね」
傷口にドクダミをあて、もう一枚のスカーフで巻いて固定した。
ありがとう、ルルーニャ。あなたのスカーフが大活躍だわ!
無事に帰還できた暁には、うんとお礼を言わなくてはならない。
とても痛いはずなのに泣きごとひとつ言わずにわたしの手当てを見守っていたシリウスが、ふうっと息を吐く。
「噛まれたのが右腕だったら、腕輪の効果でケガをせずにすんだかもな……」
自嘲気味に言うものの、いつもの生意気な態度は鳴りを潜めている。
たしか以前、呪いの腕輪をはめた右腕を切り落とそうと試みたが剣が弾かれたと言っていた。
もしもあの時、シリウスの体の向きがちがっていたら、こんなケガを負わずにすんでいたのかもしれない。
「もしかして、わたしが引っ張らないほうがよかった?」
それとも突き飛ばせばよかったのだろうか。
「いや、マリアが引っ張ってくれた助かった。あれがなければ、腹に噛みつかれていたと思う」
それを想像して、体温がスッと下がったような気がした。
腕ではなくお腹に噛みつかれていたら、もっと大変なことになっていたにちがいない。
シリウスがわたしの肩に頭を載せる。
「少しもたれてもいいか」
熱が上がってきたのかもしれない。
「横になるといいわ」
わたしはシリウスに膝枕をした。
「もしも俺が寝そうになったら……」
「え?」
シリウスがなにやらムニャムニャ言っているが、最後のほうが不明瞭で聞き取れなかった。
ほぼ寝息になっているのに、無理に起こすのも気が引ける。
眠ってしまうと危険だと言いたかったのかもしれない。
座ったまま窓から外を窺っても、炎や煙が迫っている気配はない。
だから少しの間なら大丈夫だろう。
サミュエルの姿も見えないままだ。
首を伸ばして窓の外を見ているうちに、シリウスの頭が妙に重くなった気がする。
視線を下に落としたわたしは叫びそうになった。
シリウスがいなくなり、どういうわけかわたしは大人の男性を膝枕しているではないか。



