亡国の悪役令嬢、呪われたショタ王子に拾われる

 わたしがロミオを投げ飛ばした一件は、公には伏せられたようだ。
 合わせて彼が、火薬のレシピを渡せとこちらに迫ったことも。
 ロミオのあの発言は、下手すると反逆心を持っているとの理由でいきなり処罰されてもおかしくない軽率な発言だった。
 ふたりきりだったとはいえ、どこで誰が聞き耳を立てているともしれないというのに。

 見送りに立ち会ったルルーニャによれば、帰りの馬車に乗り込むロミオの横顔は青ざめていたらしい。
「この世の終わりみたいな顔をしていたわよ」
 ということは、おそらく釘を刺されたのだろう。
 また邪なことを考えたら次はない、といった類の。

 ロミオのような単純なタイプは御しやすいにちがいない。あとは伴侶次第といったところだろうか。
「ルルーニャがロミオ様のお嫁さんになるの?」
「なるわけないでしょ!」
 即否定された。
 ロミオとルルーニャの性格的な相性は良さそうな気がしていたのだが。
 ただし政治的なこととなると、このふたりに任せておけない場面がたくさんありそうだ。

「外務大臣の次女のフランチェスカが嫁ぐときまったらしいわよ」
 ルルーニャがふんすと胸を張る。
「なるほど。フランチェスカ様はたしか、エルゼアに短期留学していたわよね」
 戦争が始まる前の話だ。年齢はわたしより四つほど年上ではなかったか。
 エルゼアの文化にも理解があるのなら適任だ。
 すでにロミオに同行しているという。
 年上の妻の尻に敷かれるロミオの姿を想像して、わたしはうふふっと笑ってしまった。
 
 舞踏会から一週間後。
 今度は狩猟大会が大々的に催されることとなった。
 戦争で暗い雰囲気に包まれていた国内を活気づけるイベントが、今後も続くらしい。

「本当は参加するつもりはなかった。でもマリアが、鳥を落とすのが得意だと言ったから」
 シリウスは急遽参加をきめたらしい。
 狩猟大会に参加する女性陣は、狩りは行わずに男性陣が成果をあげて帰ってくるのを待ちながら歓談を楽しむのが通例だ。
 しかし、怪我をしても自己責任であると誓いを立てれば女性の狩りへの参加も認められている。
 楽しそう!
「任せてちょうだい。落としまくってやるわ!」
 わたしは、わくわくしながら拳を握ったのだった。