迎えた舞踏会当日。
「完璧ね」
わたしは姿見の前で腰に手をやり、もう片方の手で髪をバサッと後ろへ払った。
この見事な縦カールの髪と勝ち気な顔立ちのおかげか、完璧に悪趣味なドレスを着こなしている。
深紅の口紅を塗った唇をにんまりさせて振り返ると、シリウスとサミュエルが拍手してくれた。
「すごい、まさに悪女だな」
「よくお似合いです。おまけに眼力で誰かを殺せそうですね!」
サミュエルは、つけまつげで盛りに盛ったアイメイクに感心した様子だ。
褒めているつもりなのだとすれば、かなり残念な称賛ではあるけれど。
今日のシリウスは王子の正装、サミュエルは騎士の正装姿で、ふたりとも様になっている。
特にシリウスは、金の肩章と金のサッシュが映えるマリンブルーの正装に、白いズボンと黒いロングブーツ姿で、小柄ながらも王子らしい威厳を醸し出している。
いつも無造作におろしている前髪を、きちっと固めて後ろへ流しているヘアスタイルも格式が高い。
舞踏会の会場は王城内の大ホールだ。
調印式は要人のみ立ち合いのもとで行われ、その報告とともに舞踏会が始まる流れらしい。
シリウスにエスコートされながら王城内の廊下を歩くと、すれちがう人がみんなギョッとしている。
「みんなが二度見していくな」
シリウスがおかしそうに笑う。
美少年っぽさの増した王子様とどぎつい悪女のペアは、さぞや異様な雰囲気を放っているにちがいない。
「なんだか小気味いいわね」
わたしたちは、まるでイタズラが成功したような気分でホールへ向かった。
ふたりで会場入りすると、ザワついていたホールがしん……と静まり返った。
豪華なシャンデリアが煌めく広いホールをゆっくり進んでいく。
わたしはシリウスと視線を交わすと、にっこり微笑み合った。
不躾な視線を隠そうともせずこちらへ向ける参加者たちの目には、わたしたちがどのように映っているだろうか。
嫌なものを見たとでも言いたげに顔を顰めて目を逸らす者、わたしのドレスに驚いて唖然としている者、そして扇子で口元を隠しながらも目を見ればニヤニヤしているのがわかる者。
反応は様々だが、ニヤついているのはわたしが嫌がらせを受けたことを事前に知っていた人たちだろう。
悪意や敵意のこもった視線は、チクチクした肌感覚として伝わってくる。
でもね、わたしは惨めだなんて思っていなくてよ?
シリウスと並んで堂々と中央へ進むと、背後からヒソヒソ声が聞こえる。
「あの方はシリウス殿下? 出席されるなんて珍しいわね」
「パートナーは、なんて下品なドレスなのかしら」
ええ、わたしもそう思うわ。
「気に入らない相手に爆弾を投げつけるのですってよ?」
ええ、実際に婚約者に投げたわね。
「シリウス殿下がおいたわしいですわ……」
いいえ、かなりノリノリよ?
心の中でツッコミを入れていると、ホール二階のドアが開いた。
調印式を終えた要人たちが並んで出てくる。
先頭にいるハニーブロンドの美丈夫は、シリウスと同じ正装をした長身の王子様。たぶんライアス王太子だろう。
その後ろにいる人物を見て、わたしは息を呑んだ。
「完璧ね」
わたしは姿見の前で腰に手をやり、もう片方の手で髪をバサッと後ろへ払った。
この見事な縦カールの髪と勝ち気な顔立ちのおかげか、完璧に悪趣味なドレスを着こなしている。
深紅の口紅を塗った唇をにんまりさせて振り返ると、シリウスとサミュエルが拍手してくれた。
「すごい、まさに悪女だな」
「よくお似合いです。おまけに眼力で誰かを殺せそうですね!」
サミュエルは、つけまつげで盛りに盛ったアイメイクに感心した様子だ。
褒めているつもりなのだとすれば、かなり残念な称賛ではあるけれど。
今日のシリウスは王子の正装、サミュエルは騎士の正装姿で、ふたりとも様になっている。
特にシリウスは、金の肩章と金のサッシュが映えるマリンブルーの正装に、白いズボンと黒いロングブーツ姿で、小柄ながらも王子らしい威厳を醸し出している。
いつも無造作におろしている前髪を、きちっと固めて後ろへ流しているヘアスタイルも格式が高い。
舞踏会の会場は王城内の大ホールだ。
調印式は要人のみ立ち合いのもとで行われ、その報告とともに舞踏会が始まる流れらしい。
シリウスにエスコートされながら王城内の廊下を歩くと、すれちがう人がみんなギョッとしている。
「みんなが二度見していくな」
シリウスがおかしそうに笑う。
美少年っぽさの増した王子様とどぎつい悪女のペアは、さぞや異様な雰囲気を放っているにちがいない。
「なんだか小気味いいわね」
わたしたちは、まるでイタズラが成功したような気分でホールへ向かった。
ふたりで会場入りすると、ザワついていたホールがしん……と静まり返った。
豪華なシャンデリアが煌めく広いホールをゆっくり進んでいく。
わたしはシリウスと視線を交わすと、にっこり微笑み合った。
不躾な視線を隠そうともせずこちらへ向ける参加者たちの目には、わたしたちがどのように映っているだろうか。
嫌なものを見たとでも言いたげに顔を顰めて目を逸らす者、わたしのドレスに驚いて唖然としている者、そして扇子で口元を隠しながらも目を見ればニヤニヤしているのがわかる者。
反応は様々だが、ニヤついているのはわたしが嫌がらせを受けたことを事前に知っていた人たちだろう。
悪意や敵意のこもった視線は、チクチクした肌感覚として伝わってくる。
でもね、わたしは惨めだなんて思っていなくてよ?
シリウスと並んで堂々と中央へ進むと、背後からヒソヒソ声が聞こえる。
「あの方はシリウス殿下? 出席されるなんて珍しいわね」
「パートナーは、なんて下品なドレスなのかしら」
ええ、わたしもそう思うわ。
「気に入らない相手に爆弾を投げつけるのですってよ?」
ええ、実際に婚約者に投げたわね。
「シリウス殿下がおいたわしいですわ……」
いいえ、かなりノリノリよ?
心の中でツッコミを入れていると、ホール二階のドアが開いた。
調印式を終えた要人たちが並んで出てくる。
先頭にいるハニーブロンドの美丈夫は、シリウスと同じ正装をした長身の王子様。たぶんライアス王太子だろう。
その後ろにいる人物を見て、わたしは息を呑んだ。



