亡国の悪役令嬢、呪われたショタ王子に拾われる

 この部屋を訪れるのはシリウスとサミュエルだけ……ではなく、もうひとり。
「メイドに放っておかれているんですってね!」
 ピンク髪のツインテールを揺らすルルーニャも、なぜか頻繁にここを訪れる。
 もちろん、わたしが招待しているわけではない。
 
「ゴミみたいな食事はいらないと言ったのですって? 随分お高くとまっちゃって」
「ゴミみたいじゃなくて、ゴミが入っていたのよ」
「まあ、難癖つけるのがお上手だこと!」
 ルルーニャのイヤリングがシャラリと音を立てて揺れる。
「メイド全員を出禁にしたらしいじゃないの」

 ルルーニャの言う通り、食事の給仕だけでなく身の周りの世話係のメイドもすべて部屋に入れないことにした。
 それをシリウスを通して伝えてある。
 理由は簡単。嫌がらせしかしないからだ。
 やめてほしいと言っているのに、わたしの自慢の縦カールを真っすぐ伸ばそうとするし、浴室に閉じ込められたこともある。
 陰湿なことに、モップをつっかえ棒にしていたのだ。

「だって、わざと浴室に閉じ込めておきながら呼んでも誰も来ないし、後から『モップが倒れたようです』なんてとぼけた言い訳をして謝りもしないのよ? 腹立つでしょう?」
「閉じ込められてどうしたの?」
「ドアを蹴破ってやったわよ。蝶番ごと外れてモップもろともドアが吹っ飛んでいったわ」
 あの時、そばかす顔のメイドは倒れたドアを見下ろして唖然としていた。
 すぐそばで、わたしが困り果てながら助けを呼ぶ様子にほくそ笑んでいたのがバレバレだ。

 ふんすと胸を張るわたしを見て、ルルーニャは紫色の目を丸くして声を震わせる。
「蹴破るって、やばすぎない……?」
 嫌がらせをするメイドたちのほうが、よほどやばいと思うわ。

 だからメイドたちはもう食事を運んでこなくなったし、身の周りの世話もしてくれない。
 それでも、困ることはあまりないのが現状だ。
 さすがは魔法大国、水回りはすべて魔法で制御されていて蛇口をひねればお湯が出る。いつでもひとりで入浴可能とは、なんて素晴らしいんだろう。
 寝起きの髪のセットは、この縦カールを一番よく知っているのはわたし自身だから、ひとりでできる。
 つまり、メイドの手を借りなくても問題なく生活していけるのだ。

 ルルーニャがなぜ頻繁に訪れるかというと、どうやらシリウスとなにを話しているのか気になっているらしい。
「今日はシリウスとどんな話をしたの?」
 彼女は十五歳だと聞いた。
「爆弾の殺傷能力を高めるためにはどうすればいいかって内容だったわね」
 するとルルーニャは青い目を大きく見開いた。
「なんて野蛮なのかしら!」
「そうよね、わたしもそう思うわ」
 十一歳の子どもとする話ではない。
 ルルーニャはフンッと鼻を鳴らす。
「賛同しないでくれる? あなたは本当に変な人だわ」