初恋は、終電の先に

 駅前で妹と別れて、私は通ってた高校へ向かった。

 大晦日だからか、街中にはけっこう人が出ていた。

 でも高校のあたりまで来ると、さすがに人も少ないし、街灯も減って風も冷たい。

 やっぱり駅前で待ち合わせにすればよかったかと後悔しかけたとき、校門が見えて、先輩が手を振ってくれていた。


「先輩! こんばんは」

「こんばんは。どうした?」


 駆け寄ると、先輩も笑顔でこっちに向かって歩いてきた。


「んー……たぶん、先輩が言われたようなことを、散々親に言われて嫌になっちゃいました」

「そっか。俺もうんざりして秋谷に助けてもらおうと思ってたところだから、助かった」

「ふふ、良かった。ねえ先輩、二年参り行きましょうよ」

「そうしよう。どこがいいかな」


 二人でスマホを覗き込んで、行き先を決めた。

 嫌になっちゃったから、混んでて、ごちゃごちゃしてて、人混みでもみくちゃになるようなところにした。

 歩き出す前に、振り返って真っ暗な校舎を見上げた。


「なんか、学校が小さく見えます」

「そうだなあ。たぶん、大人になったから」

「……そうでしょうか」


 先輩は返事をせずに歩き出した。

 私も並んで駅に向かった。

 駅前からして混んでいて、電車の中はさらにぎゅうぎゅうだった。


「大人でよかった」


 先輩がもみくちゃにされながら言った。コートはくちゃくちゃだし、眼鏡は曇ってるし、こんな状況で言うことじゃないと思う。


「なんでですか?」

「高校生のときだったら、たぶん秋谷がつぶされてても、俺はなにもできなかったから」


 そう言って、先輩は私をかばってさらに押しつぶされた。

 私はそれに、なんて言えばいいんだろう。


「先輩、私、お参りのときに、先輩にお守り買いますね」

「なんの?」

「健康長寿」

「なんでだよ」


 先輩が笑った。私は人混みに押されたふりをして、先輩の胸に耳を付けた。

 心臓の音まで優しくて、涙が出そうになる。


 結局、お参りを終えて実家に戻るまで、私は母に言われたことを先輩には言えなかったし、先輩が実家で何を言われたかも聞けなかった。

 でも代わりに、先輩も帰省をさっさと切り上げて帰るって言うので、私もそれにご一緒させてもらうことにした。