初恋は、終電の先に

 二人で駅前まで歩いて居酒屋に入る。半個室の席を選んで、狭いコーナーソファに斜め向かいで座った。

 温かい店内で先輩のメガネがふわっと曇った。私は先輩がメガネを拭くのをニヤけながら眺めた。

 気づいた先輩が呆れた顔をしながら、とりあえずビールを頼んでくれたので、そのまま乾杯した。


「お疲れ様、どう? 落ち着きそう?」

「もうちょっと落ち着かなさそうです……。あの、ちょおっと愚痴っていいですか?」


 可愛い子ぶって先輩を見上げた。手にビールの大ジョッキを抱えてる時点で全然可愛くないのに、先輩はニコッと笑って頷いた。


「もちろん。お酒飲んでデロデロに甘えてくれていいよ」

「……先輩って軽率に国を傾けてきますよね」

「何を言ってるんだよ」


 ほんともう。この人はすぐ私を甘やかしてダメにしてくる。

 そんな私の気持ちなんて知りもせず、先輩は注文用のタブレットをポチポチ操作していた。


「秋谷の好きそうなものを適当に頼んだから、他にも食べたいものがあったら頼んで」


 タブレットを受け取って注文履歴を見ると、焼き鳥がたくさん頼まれていた。あとサラダと刺し身の盛り合わせと……本当に私の好きなものばかり。

 なんなの、この人。

 どれだけ国を傾けたら気が済むんだろう。そろそろ転覆しそう。


「ありがとうございます、先輩。私が食べたいものは先輩が全部頼んでくれたから、飲み物のお代わりだけにしておきます」


 外が寒くて手がかじかんでいたから、熱燗を追加で頼んで、タブレットを戻した。

 ビールを飲み干したところで、サラダと刺し身が運ばれてきた。


 店員が仕切りの暖簾を下ろして立ち去るのを見届けて、私は山田先輩の方に身を乗り出した。