初恋は、終電の先に

 電車から降りた瞬間、一気に汗が吹き出た。

 先輩を見上げると、汗が髪を伝って首筋を流れ落ちていた。舐めさせろとは言わないから、せめてぬぐわせてほしい。

 たぶん気持ち悪いからダメって言われるのだろうけど。


 先輩と並んで駅を出て、そのまま目の前の猫カフェへ向かった。

 私も先輩も猫カフェは初めてだから、大手の猫カフェチェーンにした。中に入ると、店内は広々としていて、白とベージュを基調にした落ち着いたデザインだった。

 受付を済ませて荷物を預け、先輩はおやつも買って、いざ!


「おお、猫だらけだ」

「ですねえ」


 休みの日だけど、開店してすぐだから他のお客さんはあまりいない。

 先輩は目を輝かせて猫が座っているソファへと近づいたけど、あっという間に逃げられた。

 あまりの勢いに先輩はしょんぼりした顔になり、店員さんが苦笑しながら寄ってきた。


「猫ちゃんが驚いてしまうので、腰を落として、ゆっくり近づいてあげてくださいね」

「なるほど」


 先輩は真面目な顔で頷いて腰を落とし、別の猫にゆっくりと近づいていく。

 先輩がそっと手を伸ばすと、猫がその手に鼻を近づけた。


「……うわ」


 山田先輩の口からささやくような歓声がこぼれる。


「かわいいなあ……」

「そうですね」


 私は頷いてスマホを構えた。


 本当に、かわいい。先輩が。私は猫が特別好きなわけでも嫌いなわけでもないけど、先輩が猫をかわいがるなら、私は先輩も含めてかわいがる所存です。

 先輩が思い出したかのように猫のおやつを取り出した。

 途端に猫が群がってくる。

 受付に、あと三十分ほどで猫たちのごはんタイムと書いてあったから、きっと猫たちもお腹がすいていたのだろう。


 私は全力で写真を撮った。途中で我に返って猫も写しておく。あとで先輩に送ったら喜ぶと思うんだ。


 そうしているうちに他のお客さんも増えて、猫たちのごはんタイムになった。

 先輩のおやつもなくなったから、休憩ってことで私たちもドリンクバーでコーヒーを取ってきて、ソファで飲みながら猫たちがごはんを食べるのを眺めた。


「いやー……よかった」


 先輩はうっとりした顔で、皿に顔を突っ込む猫を見ていた。

 ちょっと面白くないけど、ここで猫に嫉妬するのはさすがに大人げないから、黙ってお茶を飲んだ。


「俺、今までの人生であそこまで猫に囲まれたの初めてだよ」

「山田先輩が楽しんでくれてよかったです」


 私としても、猫と戯れる最高にかわいい先輩の写真を山ほど撮れたから、これはこれで悪くない。何枚か印刷して持ち歩きたいくらいかわいかった。先輩が。


「もう一匹、撫でないと」


 ふと先輩が立ち上がった。

 私に手にしていた紙コップを渡すと、そのまま手洗い場に行ってしまった。

 見ていたら戻ってきて、また隣に腰を下ろした。