初恋は、終電の先に

 花沢さんは白い目を私に向けてから、磯山先輩に


「ご一緒してもらってもいいですかあ?」


 と、さっきより半音高い声を向けた。


「山田先輩、肉を取りに行きましょう」

「う、うん」


 磯山先輩が花沢さんに誘われて隣に腰を下ろしたのを確認してから、困った顔の山田先輩と歩き出す。


「先輩、次は二人で来ましょうね」

「……うん。俺も同じこと思ってた」

「でも今日も花沢さんを焚きつけておいたんで、多少は二人でゆっくりできると思いますよ」

「何してんのさ」


 山田先輩が呆れたように笑って歩き出した。

 私も遅れずについていく。


「……だって、先輩のこと、取られたくなかったんですもん」

「俺のこと欲しがる奇特な人間は秋谷しかいない」


 そう言って少し前を歩く先輩がどんな顔をしているのか、わからなかった。

 ていうか、花沢さんがあからさまに先輩を狙ってたのに、気づいてなかったのか、この人。


「そんなこともないんですけど」

「あるよ。秋谷、肉はどれがいい? 牛とか豚だけじゃなくて羊もある」

「羊いいですねえ。えっと、牛と羊を山ほどと、豚は味付きがいいなー。鶏は焼き鳥がいいです」

「はいはい」


 先輩は微笑んで、私が食べたいと言った肉を取り皿に盛っていった。

 それからサラダも受け取って席に戻ると、さっそく花沢さんと磯山先輩はいい感じで話し込んでいた。


「お肉お待たせしましたー」

「お、サンキュ。じゃあ焼くか」

「焼くのは私がやりますよ」


 花沢さんがニコッと微笑んで、山田先輩から肉の皿とトングを受け取った。

 山田先輩はちょっと首をかしげて、それから私の隣に腰を下ろした。


「秋谷の言うとおりだ」

「うまくいってよかったです。山田先輩、乾杯しましょう」


 ジョッキを掲げると、先輩がふにゃっと微笑んで、カチンとぶつけてくれた。

***