初恋は、終電の先に

 目的の焼き鳥屋さんのカウンターで、私はジョッキをあおった。

 一瞬で空になったから、通りすがりの店員にお代わりを頼んで、隣で焼き鳥を串から外している先輩を見上げた。


「さっきの方は、先輩のお知り合いですか?」

「うん。今俺が担当している案件に追加で入ってくれた人」

「へえ」


 つい、低い声が出てしまった。

 あんまりちゃんと見られなかったけど、すらりとしたきれいなお姉さんだった。

 そうか。先輩と一緒に仕事をしてる人なのか。

 面白くないな。

 唇を尖らせていたら、先輩が私に皿を向けてきた。


「どうぞ」

「……ありがとうございます」


 チョロい私は、それだけで機嫌を直して口を開けた。


「秋谷、焼き鳥は何が好き?」

「ぼんじりと皮と砂肝が好きです。塩か柚子胡椒でお願いします」

「もう何本か追加しよう」


 先輩は店員に声をかけた。同時にビールのおかわりがやってきた。

 受け取ったビールを傾けようとしたら、また先輩が焼き鳥の皿を差し出してくるから、ありがたく受け取る。

 先輩は手元のビールグラスを傾けてから、焼き鳥を串から外した。


「先輩、食べてます?」

「あんまり。秋谷に食べさせるほうが楽しいから」

「ぶー」

「どうした?」

「どうもしないですけど。先輩、さっきの方とは親しくされてるんですか?」


 聞かなきゃいいのに。

 つい口から出てしまった言葉は戻せない。

 山田先輩は焼き鳥を見ながら、僅かに目を細めて首を傾げた。


「いや? そもそもさっきの……花沢さんが追加で入ったのってゴールデンウィーク明けからだからさ」

「あー、そうなんですね」


 ……その割には、馴れ馴れしいな、とか。

 完全に嫉妬とやっかみだから、言わないけど!


「同い年らしくてさ、でもすごい仕事できる人だから助かってるよ」

「へえ」


 ああ、ダメだ。私の愛想は、もう本日の営業を終えてしまったらしい。

 先輩は私の様子に気づいているのかいないのか、花沢さんの仕事ぶりを褒めていた。


「……というわけで」

「は、はい」


 ムカついて全然聞いていなかったのに、山田先輩はやけに嬉しそうに私を覗き込んできた。