初恋は、終電の先に

「山田せんぱーい」


 手を大きく振ったら、先輩がぱっと私を見つけて、柔らかく微笑んだ。

 十年前から私の好きな笑顔だ。

 ゴールデンウイーク最終日の今日は、大きなターミナル駅で山田先輩と待ち合わせをしていた。

 大きな駅だから駅ビルも広くて、その一角にある書店の本店へ行く約束をしていた。


「お待たせ」

「今来たところです」


 デートみたいなことを言ってしまって、つい頬がゆるんだ。

 小走りでやってきた先輩は、七分丈の細身のボトムにパーカー、その上から薄手のテーラードジャケットを羽織っていた。

 前にセンスないって言ってなかったっけ。

 最高だけど。


「山田先輩は今日もかっこいいですねえ」

「秋谷以外に言われたことないって」

「そうでしたね。私と先輩の秘密でした」

「その服、衣替えで出してきたんだ?」

「あ、そうです、そうです」


 私は薄手のデニムのワイドパンツに、ひらひらした半袖のブラウス。足元はせっかくだし、ヒール高めのサンダルにしてきた。


「どうでしょうか?」

「かわいいです」

「……すみません、言わせてしまいましたね」


 誘い受けみたいなことをしてしまって、ちょっと反省。

 山田先輩はきょとんとしてから苦笑して、少し身をかがめて私を覗き込んだ。

 待って、近い近い。ほんの少し首を伸ばしたらキスできそうな距離。


「俺、慣れてないから言わないだけで、秋谷のことは十年前からかわいいって思ってるよ」

「えっ」

「行こうか」


 先輩は目を細めて、ゆっくり歩き出した。

 相変わらず先輩が過剰供給で、私はまったく付いていけていない。

***