初恋は、終電の先に

 ゴールデンウイークの中日の平日、昼ごはんを終えて自席に戻ると、早川さんが私の席に座って磯山先輩と話していた。
 早川さんは私に気づいて、腰を浮かせた。


「あ、秋谷先輩、すみません。どきます」

「お手洗いに行くから急がなくていいよ。そうだ、磯山先輩、先日教えていただいたお店のリストありがとうございました。美味しかったです」

「そらよかった」


 早川さんが私の顔を見て首を傾げた。


「秋谷先輩、今日もデートですか?」

「えっ、あ、デートってわけじゃ……ないけどお」


 つい目を逸らすと、早川さんがにやっと笑った。


「ひゅー、かわいい。ね、磯山先輩。最近の秋谷先輩、むちゃくちゃかわいいですよね」


 話を振られた磯山先輩が顔をしかめた。


「本当だよ。先に唾つけときゃよかった」

「えっ」

「ばーか、冗談だよ。お前、俺に興味ないだろうが」


 磯山先輩は顔をしかめたまま肩をすくめる。

 それがどういうつもりなのかわからなくて、首を傾げた。


「ないですけど」

「少しは気遣えよ……」

「いや、先輩、結婚秒読みの彼女いるじゃないですか」

「別れた」

「えっ」


 私は思わず一歩後ずさり、早川さんは目を丸くした。磯山先輩は背中を丸めたまま、キーボードを叩いていた。


「……この話おしまい」

「磯山先輩、よければあたしの彼女とハーレム山登りします?」

「おしまいっつったろ! 早川の山登りってガチなやつじゃねえか。気分転換なんてレベルじゃねえだろ」


 磯山先輩にじろっと睨まれて、早川さんはそそくさと自分の席に戻っていった。

 私も化粧を直しに、お手洗いに避難した。