初恋は、終電の先に

 そう、私は今まで先輩と出かけたことがない。高校のときは、学校の中だけの付き合いだったし。

 だから余計に浮かれ倒しているんだけど。


『秋谷はさあ、ほんとにさあ……』

「先輩はいつものと、昨日のだとどっちが好きですか?」

『どっちでもいいよ。でも、わざわざつけてくれたっていうのは嬉しい』

「なるほど。じゃあ、普段使いと、先輩とのお出かけ用は分けておきます」

『あと、爪の色も変わってた』

「気づいていただけましたか! あ、キモくないですからね? 気づいてもらえて嬉しいです」


 おしゃれしがいがある。

 あとで違う色を買ってきて塗り直そう。

 その後は少し話しておしまい。

 また今度ごはんに行く約束をして、通話を終えた。

***

 翌週の金曜日、また私は山田先輩と待ち合わせてごはんを食べに行った。

 今回はちょっといい定食屋さんで、向かい合ってごはんにした。

 並んで座るのも近くていいけど、向かい合うのも先輩の顔をじっくり見られて最高。


「秋谷さ」

「はあい」

「見過ぎ」


 先輩は苦笑して箸を進める。皿の上では鰆がきれいにほぐされていた。


「すみません。つい。先輩の顔は見られるときに見ておきたいんです」

「いつでも見られるだろ」

「……写真撮っていいですか?」

「なんか怖いからダメ」

「ぶー」


 私は先輩ほどきれいに魚をほぐせないけど、焼き魚は食べたい……ということでホッケをいただいていた。

 日本酒がほしいなあ。


「そういえば、今日は時間は大丈夫?」


 ふと先輩が言った。


「大丈夫ですよ。私、一人暮らしですから」

「やっぱりそうなんだ。俺もだよ。いいよな、一人暮らし」

「楽ですよねえ。ついだらけちゃうんですけど。でも先輩にお誘いいただけると思ったら、ちゃんと起きて掃除や洗濯をするようになったので、今後もお誘いください」

「じゃあ、遠慮なくこれからも誘わせてもらうわ」


 目の前でニコッと笑う先輩がかっこよくて、私は締まりなくふにゃふにゃに笑っていた。