先輩、私のこと心配して連絡くれたの? 好きすぎる。無理。
心の準備をしてなかったら、たぶんまたベッドでミノムシになっていた。
しばらく打っては消し、打っては消して、ようやく
「おはようございます。ちゃんと帰りました。先輩は大丈夫でしたか?」
と、無難そうなメッセージを送った。
スマホをテーブルに伏せて、部屋の中に掃除機をかけた。途中でまたスマホが鳴っていたけど放置して、掃除を先に終わらせる。
掃除機を片づけてから早川さんに返事をして、山田先輩からのメッセージを確認した。
『今電話大丈夫?』
「だいじぶです!!!」
つい反射で送ってしまった。なんにも大丈夫じゃない。
なのにメッセージには一瞬で既読がついて、次の瞬間には電話がかかってきた。
「いー……マジか」
心の準備をさせてくださいよお……。でも先輩をお待たせするわけにはいかないから、通話ボタンを押す。
「も、もしもーし……」
『……おはよ』
スマホの向こうから、低い声がした。
もしかして、山田先輩、寝起きなのかな?
「お、おはようございます。えっと、先輩?」
『ん……おはよ』
先輩、「おはよ」しか言ってない。かわいい、どうしよう。
『秋谷、昨日ちゃんと帰れた?』
「はい、大丈夫です。あの、先輩もしかして今まで寝てました?」
『うん……秋谷は起きてた? 偉いね……』
スマホの向こうから、小さな唸り声がした。もしかして、伸びとかしてるのかな。ああもう、好き。
言葉を選んでいると、スピーカーにして画面を見ると、早川さんからメッセージが来ていた。
『そういえば、昨晩のヘアオイルの評判どうでした?』
えっ、どうだったんだろう?
聞いていいのかな。
「あの、先輩?」
『んー、ごめん、寝ぼけてた』
「大丈夫です……。あのお、昨晩、私、匂い大丈夫でしたか?」
『大丈夫って?』
スマホの向こうから、怪訝そうな声がした。聞き方間違えた……!
ダメだ。おとなしく白状しよう。別に隠してるわけじゃないし。
私は顔を上げて、窓の外を見た。洗濯物が春風に揺ていた。ひらひらと桜の花びらが見えた気がした。
「昨晩、会社を出る前に後輩が柑橘の香りのヘアオイルをつけてくれたんです。ごはん中に匂いが気にならなかったか確認したくて」
『ああ、そういうこと』
山田先輩は目が覚めたらしく、いつもどおりの優しい声で答えた。
『ミカンみたいないい匂いがするって思ってたよ。いつもはもっと女の子っぽい匂いだよな』
「わ、気づいてたんですね」
臭くなくてよかったけど、それはそれで恥ずかしい。
スマホの向こうで、また小さく唸るような声が聞こえた。
『ごめん、キモくて……』
「キモくないです!」
『うるさ』
「キモくないです!!」
言い返すと、先輩の笑い声が聞こえた。誰ですか、私の好きな人のことキモいとか言うの。許さないよ、ほんと。
『ふふ、ごめん。俺もおじさんだからさ、女の子の匂い嗅いでたらキモいかと思ったんだけど』
「少なくとも私は大丈夫です。ていうか、先輩とのごはんのためにつけてもらったから、むしろお願いします」
『……わざわざ?』
先輩の声が、少しからかうような口調になった。
ついむきになって言い返してしまう。
「はい、わざわざ。先輩とのお出かけは初めてですから」
心の準備をしてなかったら、たぶんまたベッドでミノムシになっていた。
しばらく打っては消し、打っては消して、ようやく
「おはようございます。ちゃんと帰りました。先輩は大丈夫でしたか?」
と、無難そうなメッセージを送った。
スマホをテーブルに伏せて、部屋の中に掃除機をかけた。途中でまたスマホが鳴っていたけど放置して、掃除を先に終わらせる。
掃除機を片づけてから早川さんに返事をして、山田先輩からのメッセージを確認した。
『今電話大丈夫?』
「だいじぶです!!!」
つい反射で送ってしまった。なんにも大丈夫じゃない。
なのにメッセージには一瞬で既読がついて、次の瞬間には電話がかかってきた。
「いー……マジか」
心の準備をさせてくださいよお……。でも先輩をお待たせするわけにはいかないから、通話ボタンを押す。
「も、もしもーし……」
『……おはよ』
スマホの向こうから、低い声がした。
もしかして、山田先輩、寝起きなのかな?
「お、おはようございます。えっと、先輩?」
『ん……おはよ』
先輩、「おはよ」しか言ってない。かわいい、どうしよう。
『秋谷、昨日ちゃんと帰れた?』
「はい、大丈夫です。あの、先輩もしかして今まで寝てました?」
『うん……秋谷は起きてた? 偉いね……』
スマホの向こうから、小さな唸り声がした。もしかして、伸びとかしてるのかな。ああもう、好き。
言葉を選んでいると、スピーカーにして画面を見ると、早川さんからメッセージが来ていた。
『そういえば、昨晩のヘアオイルの評判どうでした?』
えっ、どうだったんだろう?
聞いていいのかな。
「あの、先輩?」
『んー、ごめん、寝ぼけてた』
「大丈夫です……。あのお、昨晩、私、匂い大丈夫でしたか?」
『大丈夫って?』
スマホの向こうから、怪訝そうな声がした。聞き方間違えた……!
ダメだ。おとなしく白状しよう。別に隠してるわけじゃないし。
私は顔を上げて、窓の外を見た。洗濯物が春風に揺ていた。ひらひらと桜の花びらが見えた気がした。
「昨晩、会社を出る前に後輩が柑橘の香りのヘアオイルをつけてくれたんです。ごはん中に匂いが気にならなかったか確認したくて」
『ああ、そういうこと』
山田先輩は目が覚めたらしく、いつもどおりの優しい声で答えた。
『ミカンみたいないい匂いがするって思ってたよ。いつもはもっと女の子っぽい匂いだよな』
「わ、気づいてたんですね」
臭くなくてよかったけど、それはそれで恥ずかしい。
スマホの向こうで、また小さく唸るような声が聞こえた。
『ごめん、キモくて……』
「キモくないです!」
『うるさ』
「キモくないです!!」
言い返すと、先輩の笑い声が聞こえた。誰ですか、私の好きな人のことキモいとか言うの。許さないよ、ほんと。
『ふふ、ごめん。俺もおじさんだからさ、女の子の匂い嗅いでたらキモいかと思ったんだけど』
「少なくとも私は大丈夫です。ていうか、先輩とのごはんのためにつけてもらったから、むしろお願いします」
『……わざわざ?』
先輩の声が、少しからかうような口調になった。
ついむきになって言い返してしまう。
「はい、わざわざ。先輩とのお出かけは初めてですから」



