初恋は、終電の先に

 山田先輩とごはんに行った翌日の昼、私はベッドの上で身もだえていた。


「あー……好き……無理、好き……」


 昨晩のほろ酔いの山田先輩にやられたダメージが致命傷なのだ。だってさあ、だってさあ!!


 元から穏やかな人ではあったけど、お酒でちょっとかすれた声でふにゃっと微笑まれたら、十年先輩に片思いしてる身としては過剰供給なのです。

 そもそも供給があったのは十年のうちの最初の一年だけで、高校二年からふた月ほど前までの九年間は供給なしで生きていたのに。
 それがいきなりの供給過多で、ちょっと受け入れが追いつきませんね……。


 昨日はいい気分で帰ってきて、さっとシャワーだけ済ませて、そのまま寝てしまった。だけど今朝起きてから諸々思い出して、処理しきれなくてこのように悶えている次第である。

 でもカーテンの隙間から射しこむ光もだいぶ高くなってきたし、そろそろ起きて洗濯を回した方がいい。


 のそのそと起き上がって、とにかく顔を洗って歯を磨いた。洗濯を回してカーテンを開けると、外には春のうららかな日差しが降り注いでいた。

 山田先輩に再会してから、景色がやけにきれいに見えた。

 鼻歌交じりでベランダを掃いちゃったりする。引っ越しをしてから初めてのことかもしれない。


 そのまま洗濯ものを干していたらスマホが震えた。

 山田先輩と早川さんからだ。

 まだ先輩の供給の受け入れ態勢が整っていないから、まずは早川さんのメッセージから確認する。


『デートどうでした?』

「国が傾きそうなくらいかっこよかった」


 そう送ると、すぐに返事が返ってきた。


『(笑)今度その傾国の美女、見せてください』

「ダメ」


 送ってから、ダメもなにも、自分が山田先輩の写真を一枚も持っていないことに気づいた。高校のときの写真は、たぶん実家に置いてきたガラケーを見れば入ってるはずだけど、充電できるかもわかんないし。

 そうなると、早川さんに見せるなら直接ってことになるけど……やだな。早川さん、かわいいから。

 かわいくて明るくて元気で、きっと山田先輩から見てもいい子だと思う。

 だから、会わせたくない。

 つい余計な想像をしてもやもやしていたら、早川さんから返事が来た。


『こちら、あたしのハニーです』


 早川さんと、たくましい美女のツーショット写真だった。腕を組んでポーズを決めている。ちょっと意味が分からなくて、しばらく写真を見つめてしまった。


「私の傾国の美女とは方向性が違うなあ」


 つまり、早川さんは私の警戒に気づいたんだろう。

 後輩に気を遣わせてしまった……。


「彼女さん? お美しいですね」


 と返して、ほったらかしていた残りの洗濯物を全部干した。

 それからベッドに腰かけて、ようやく山田先輩からのメッセージを開く。


『おはよ。昨日はちゃんと帰れた?』

「すっき……っ」