「わ、もうこんな時間だ」
先輩は一通り話を終えて、時計を見て目を丸くした。
「ごめん、こんな時間まで引き留めちゃって」
「大丈夫です。家には連絡してありますし」
まあ、私の代わりに柚希に手伝いを頼んだだけだけど。
ママから『せっかくなんだから、ゆっくりおしゃべりしておいで』って返事が来ていたから大丈夫。
「でも、そうですね。先輩も疲れてるでしょうし、そろそろ帰りましょうか」
立ち上がって二人分のトレーを片付けた。
自転車まで戻って、先輩からお土産の紙袋を受け取る。
「お土産、こんなにたくさんありがとうございます。あ、そうだ」
紙袋に入っていたプルメリアの飾りのついたゴムを取り出して髪を結んだ。
「似合いますか?」
「うん。すごくかわいい。プルメリアの花言葉って『陽だまり』とか『気品』って書いてあったから花菜ちゃんにぴったりだと思ったんだ」
先輩の手が伸びてきて、ポニーテールにした私の髪に触れた。顔が私の頭に近づいて、すぐに離れた。
「先輩……?」
「似合ってる」
「……ありがとうございます」
先輩の顔が赤いのは、たぶんバカみたいに暑いせいだ。
だから、私も熱くて、汗が止まらないし、心臓もうるさいのも仕方ない。
全部、六月なのに熱すぎるせいだ。
***
家に帰って、お土産の中から箱菓子を出してママに渡す。
そうすると、いい感じに家族に分けてくれる。
私は汚れてもいいジャージに着替えて、玄関で長靴を履いた。
「パパー、ただいまー! 手伝いあるー?」
「ある。バイトを追加で雇いたいくらいある」
「私がやるよ!」
畑に入ると、草陰から柚希が顔を出した。
「姉ちゃんはまず俺にいきなり手伝いを押しつけたことを謝れ!」
「ごめーん。もらったお土産のお菓子あげるから」
「サーターアンダギーある?」
「あるけど、それは私のだからダメ」
「うるせえな、柚希、草むしりは終わったのか? 花菜、じいさん手伝って明日出荷分の花の用意しろ!」
「へいへい」
「はーい」
パパに怒鳴られて、私と柚希はそれぞれの仕事に向かった。
おじいちゃんに部活や藤也の話をしながら、出荷する花を選んでいく。
「おじいちゃん、この小さいカラー、もらっていい?」
「いいよ。あ、それはダメ。明後日に出す。そっちのはいい」
「何が違うの?」
「まだそれは見分けられねえか。葉っぱがさ……」
教わりながら、いくつか花をもらった。
カラー、ルリタマアザミ、それからデルフィニウム。青と白の花にグリーンを足して、こんなもんかな。
私には藤也や藤也のお父さんみたいにセンスのあるものは作れないけど、それでももらった分の気持ちくらいは返したかった。
先輩はどんな思いで、私にたくさんのお土産を選んできてくれたんだろう。
私は先輩に、ちっとも優しくなかったのに。
お菓子や髪飾り、ポストカードにキーホルダー。ぬいぐるみはシーサーだけじゃなくて、マナティと、あとなぜか海ぶどう。海ぶどうのぬいぐるみって、なにさ。
でもちょっとかわいかったから、あとでカーテンタッセルにぶら下げておこうと思う。
たぶん、本当にかわいいのは海ぶどうじゃなくて、それを選んだ先輩の方なんだ。
先輩は、本当にたくさん写真を撮って送ってくれた。正直、通知がうるさかったし、写真集でも作るつもりかなってくらい量があって、全部は見られていない。
それでも、それだけの景色を私に見せたいと思ってくれたことが嬉しかった。
だからまあ、私ができるお礼をしようと思ったんだ。
適当に束ねた花を、小さいバケツに水を張って入れておく。
包むのはあとで適当に買ってこよう。
先輩はどんな顔で受け取るだろう。
いつもの、ふにゃっとした顔をしてくれたら、嬉しいなあ。
***
先輩は一通り話を終えて、時計を見て目を丸くした。
「ごめん、こんな時間まで引き留めちゃって」
「大丈夫です。家には連絡してありますし」
まあ、私の代わりに柚希に手伝いを頼んだだけだけど。
ママから『せっかくなんだから、ゆっくりおしゃべりしておいで』って返事が来ていたから大丈夫。
「でも、そうですね。先輩も疲れてるでしょうし、そろそろ帰りましょうか」
立ち上がって二人分のトレーを片付けた。
自転車まで戻って、先輩からお土産の紙袋を受け取る。
「お土産、こんなにたくさんありがとうございます。あ、そうだ」
紙袋に入っていたプルメリアの飾りのついたゴムを取り出して髪を結んだ。
「似合いますか?」
「うん。すごくかわいい。プルメリアの花言葉って『陽だまり』とか『気品』って書いてあったから花菜ちゃんにぴったりだと思ったんだ」
先輩の手が伸びてきて、ポニーテールにした私の髪に触れた。顔が私の頭に近づいて、すぐに離れた。
「先輩……?」
「似合ってる」
「……ありがとうございます」
先輩の顔が赤いのは、たぶんバカみたいに暑いせいだ。
だから、私も熱くて、汗が止まらないし、心臓もうるさいのも仕方ない。
全部、六月なのに熱すぎるせいだ。
***
家に帰って、お土産の中から箱菓子を出してママに渡す。
そうすると、いい感じに家族に分けてくれる。
私は汚れてもいいジャージに着替えて、玄関で長靴を履いた。
「パパー、ただいまー! 手伝いあるー?」
「ある。バイトを追加で雇いたいくらいある」
「私がやるよ!」
畑に入ると、草陰から柚希が顔を出した。
「姉ちゃんはまず俺にいきなり手伝いを押しつけたことを謝れ!」
「ごめーん。もらったお土産のお菓子あげるから」
「サーターアンダギーある?」
「あるけど、それは私のだからダメ」
「うるせえな、柚希、草むしりは終わったのか? 花菜、じいさん手伝って明日出荷分の花の用意しろ!」
「へいへい」
「はーい」
パパに怒鳴られて、私と柚希はそれぞれの仕事に向かった。
おじいちゃんに部活や藤也の話をしながら、出荷する花を選んでいく。
「おじいちゃん、この小さいカラー、もらっていい?」
「いいよ。あ、それはダメ。明後日に出す。そっちのはいい」
「何が違うの?」
「まだそれは見分けられねえか。葉っぱがさ……」
教わりながら、いくつか花をもらった。
カラー、ルリタマアザミ、それからデルフィニウム。青と白の花にグリーンを足して、こんなもんかな。
私には藤也や藤也のお父さんみたいにセンスのあるものは作れないけど、それでももらった分の気持ちくらいは返したかった。
先輩はどんな思いで、私にたくさんのお土産を選んできてくれたんだろう。
私は先輩に、ちっとも優しくなかったのに。
お菓子や髪飾り、ポストカードにキーホルダー。ぬいぐるみはシーサーだけじゃなくて、マナティと、あとなぜか海ぶどう。海ぶどうのぬいぐるみって、なにさ。
でもちょっとかわいかったから、あとでカーテンタッセルにぶら下げておこうと思う。
たぶん、本当にかわいいのは海ぶどうじゃなくて、それを選んだ先輩の方なんだ。
先輩は、本当にたくさん写真を撮って送ってくれた。正直、通知がうるさかったし、写真集でも作るつもりかなってくらい量があって、全部は見られていない。
それでも、それだけの景色を私に見せたいと思ってくれたことが嬉しかった。
だからまあ、私ができるお礼をしようと思ったんだ。
適当に束ねた花を、小さいバケツに水を張って入れておく。
包むのはあとで適当に買ってこよう。
先輩はどんな顔で受け取るだろう。
いつもの、ふにゃっとした顔をしてくれたら、嬉しいなあ。
***



