ワンルーム、きみと小さな海をみる






「──ありがとう。助かりました」

「どうも。じゃ、俺はこれで」



それから数分後。わたしは自由になった上半身を起こして、ぺこりと頭を下げた。

さっきまでわたしを苦しめていた網を回収したアオさんはそのまま去ろうとして、ふと立ち止まった。




「なぁあんた、これからどうすんの?」

「どう…とは?」

「迷子なんだろ。帰り方とかわかってる?」



はっとした。

そうだ、わたしは迷子なんだった。


ここの海はあたたかい。
わたしがいたところはもっと冷たかった。

それだけの情報でみんなのところに帰れる?

これは自慢じゃないけれど、わたしには方向音痴の()もあった。




「無理かも……」



それに鱗だってボロボロだし、怪我もしてる。

またイルカや他の魚たちに襲われるかもしれない。

そうしてやっとの思いで帰ったわたしをみんなはまた嗤うだろう。お前はほんとうにドジだなって。


やっぱり、とわたしはつぶやいた。




「やっぱり、帰れないかも。帰っても居場所がないかも。みんなわたしがいなくなって、せいせいしてるかも。わたしが…出来損ないだから」


「……出来損ない」