背筋を伸ばして、お腹まで空気を取り込む。
それをありのままの歌声に乗せて、冒頭から歌い出した。
「――ぎこちない一歩 踏み出した朝に……」
安心した分だけ表情が和らいで、吸った分の息が真っ直ぐ歌声だけに乗る。
体は思い通りに動いて、ふわり、びっくりするくらい軽やかにステップを踏んだ。
南のまつ毛がピクリと揺れる。目が丸く見開いた。
メロディ、歌詞、キラキラのお星様みたいな爽やかな伴奏。
合わなきゃとかこうすべきって思うものがなくなると歌だけに集中できる。
だから、感情を乗せられる。
楽しいって思える。
ふっと視線を流すと、ぽかんとしてる南と目が合う。
どんな気持ちの顔なの?それ。
わからないけど、今楽しいのは南のおかげだから。
“ありがとう”って気持ちを込めて笑いかける。
南の時が止まったみたいになって、床についた手は無意識に拳を握る。
伝播した高揚感に、驚いているようだった。
ストップがかからないから、一先ずAメロを歌い切ってみる。
まだ続くカラオケ音源を止めると、しん、とした沈黙が続いている。
「やっぱり変だったかな」
「いや、よかった」
南は跳ねるように立ち上がる。
手を当てた腰を折り曲げて、私の顔を覗き込んだ。
「声の伸びが格段に良くなった。
ダンスもオリジナルに忠実ではあるけど、今の方が断然目を引く」
褒められた。
そんな風に言ってくれるなんて思わなくて、口がぽかんと開いてしまった。



