――同時刻、スタジオA
広い室内の片隅で、ユウキ・蓮・昊はスマホ片手に小さく丸くなって集まっている。
お互いの距離は何となく開いていて、関係値はそう高くないと言っているかのようだ。
「曲、どうする〜?なんか得意なテイストとか、ジャンル、ある?」
無表情の昊と仏頂面のユウキに挟まれた蓮が、やりづらさを緩和するようにへらっと笑う。
その笑みに釣られる人はいなかった。
「……なんでもいい。好きなのにして」
くぁ、と昊は欠伸を漏らす。
蓮が口を尖らせた。
「えー、それ1番困るやつー。
あっちなみに俺、ダンス得意よ?ラップもちょっとはイケるしー……」
「じゃ、“NO MERCY”は?」
スマホで曲を検索していたユウキの視線が2人の方に上がってくる。
曲名を聞いて、蓮の口端がわずかに引き攣った。
「もしかしなくてもそれって、VANTYXの曲?
あれ、振りえぐいしラップも詰め込みだし、普通3時間でやる曲じゃなくない?」
「完全再現じゃなくてもいいでしょ。
何?できない?」
煽るような鋭い目。蓮がゔっと息を詰まらせた。
「……俺はそれでいいけど。歌は入ってるし」
「昊、いいの!?
うぇー、じゃあ多数決負けてんじゃぁん」
蓮が大袈裟に肩を落とす。
ぶつぶつ文句を言いながら、最後に「しゃーない」と呟いた。
サラサラのモーヴ髪から除くユウキの目が、ゆらりと燃える。
勝ちをとりにいく本気の目だ。
「このパフォーマンスでアイツら黙らす。
特に美嶋千景。甘い気持ちでこの世界に入ろうとしたこと後悔させてやる」



