言葉に詰まる私に南はクッと苦笑する。
それから、唐突に私の頭を両手でぐしゃぐしゃと撫で乱した。
「なんとなく答えわかったからいいや!
“やりたくない”じゃなかっただけオッケーにする」
――え、いいの?
なんて私が思うのもヘンだけど。
荒っぽく撫でてくる手の振動に顔を顰める。
ふと、その手がまた私の両頬を掬ってぐいっと上を向かせた。
「一緒にやろーぜ、千景」
また近づく、顔同士の距離。
薄く開いた唇からこぼれた八重歯が、キラリと光って、妖しさを増す。
「flying-Hiで、アイドル界のテッペンとるの」
――本気の目。
ぞくぞくと、全身の血液が泡立って温度を上げる。
私には、アイドルやる覚悟も意欲もまだない。
熱弁されたわけでも、説得されたわけでもないのに。
南の本気に、思わずときめいてしまった。
この本気に、私は応えられる?
性別を偽るっていう、でっかいリスクも抱えてるのに。
頭はずっとごちゃごちゃ何か言ってる。
だけど、南の熱い手と真剣な目がノイズを全部遮断した。
だから、私。
頷いてしまった。



