――私が走り去っていく音を聞きながら、南はずるりと壁に背を預ける。 (まじでミスった。急にあんな顔、反則だろ) その脳裏に焼きつくのは、弱りきった千景の顔。 顔を真っ赤にして、眉を垂らして。 熱っぽい上目遣い。 あの瞬間、冗談のはずだった距離が、冗談じゃなくなりかけた気がした。 「ガキんちょだと思ってたのになぁ――……」 乾いた笑いを、残り少ない炭酸で一気に流し込む。 「うわ。もう気ぃ抜けてるわ」 空っぽになったサイダーの缶の中を、覗くようにじっと見つめた。