5月も終盤に差し掛かる頃。
私達は休みなんて言葉を知らないかのように、忙しくしていた。
配信・番組出演・イベント出演etc……
レッスンだらけの日々が、いつの間にか仕事とレッスンで埋まる日々に変わっただけで――
今までも休みなしだったんだけどね。
――そんな今日はレッスン後、久しぶりの半日オフ。
練習を終えたレッスンスタジオには、浮き足だった空気が流れていた。
「昊はこの後何すんの?」
壁際で、リュックに雑にタオルを詰め込みながら南が隣の昊に話しかける。
側にいる蓮は、ぼーっとスマホ弄りをしている。
「……帰るけど」
「そーじゃねぇよ。帰って何すんのって話!」
南は笑いながら、ビシッと昊の胸を手の甲で打つ。
「さぁ…?漫画とか……?
この間千景に勧められたやつ」
「おっ、意外〜。昊って漫画とか読むん?」
「普段は読まないけど。千景が珍しく熱弁してきたから。
……ナントカ?って少女漫画」
ぴくり。
スタジオの奥で自主練してた私やユウキのところまで、そんな会話が聞こえてくる。
踊っていた足を止めて、私は2人の方に振り返った。
「“君恋”ね!“今日、君に恋をする”!」
「めっちゃ食いつくじゃん!」と南が噴き出す。
「げ、千景ちゃん少女シュミ?
やめてよ、いよいよ性別不詳になってくるからぁ」
ふと視線を持ち上げた蓮が、嫌そうな半笑いで言った。
ギクリ。
「ちちちがうよ、漫画全般好きなの!少年漫画とかも読むし――……」
どうかなぁと疑いの眼差し。
南が“アホだな”とでも言いたげにげらげら笑ってた。
――その時、蓮のスマホが短く鳴る。
スマホをタップした蓮の眉が僅かに寄った。



