ハウスクリーニング山代には休みが無い

「ぜーぜー…。…ところで風ちゃん、今日は何の仕事なのさ?」

長沼はちょうど頭を洗いに湯船から出て行ったところだ。

「ぜーぜー…。…今日この温泉に麻薬の密売人がやってくる予定なんだとよ。そんで、この温泉でさりげなく取り引きが行われるらしくて、そこを押さえる仕事だ」

「えーーーーーーっ!!?」

「やかましい!」

「風ちゃん始末屋じゃなくて警察官に転職したら?クイックル刑事《デカ》として日本警察の顔になれるよ!」

「煩い!長沼に聞かれるだろ!仕事の話しは静かにしろ!」

「はいはい、分かりましたよ〜…。で、密売人の特徴は?」

「白髪のハゲで眉毛が太くて痩せ型の爺さんらしい。名前は小田(おだ)だ」

「もれなくこの大浴場に居るお爺さん全員一卵性双生児なんですが!?」

「だからいちいち叫ぶな!」

爽太を湯船の中に押し込むと、口元までお湯に浸かった爽太と2人で目の前を行き交う小田軍団をしばし目で追いかけた。

「おふぁはんっへはじへひへふの?(訳・小田さんっマジで来てるの?)」

「分からん」

「ええっ、じゃあどうすんの!?」

「だから騒ぐなっつの!長沼が…」

もう一度爽太を湯船に沈めようと腕を上げたら俺の腕が誰かにぶつかって、その人が桶に入れて持ち歩いていた物がバサバサーッと床に落ちて散らばった。

透明な小さい袋に入った怪しさ満載の物を見て俺らと持ち主の爺さんはカポーン…と一瞬時が止まった。