叶兎くんはバツが悪そうに、フイと視線を斜め下に逸らした。
「 ……分かってる。」
「本当に分かってる?今胡桃ちゃんに近寄ろうとしてたよね?」
「っ、……それは…」
図星を突かれて、叶兎くんの言葉が詰まる。
「今の叶兎は、理性よりも吸血鬼の本能が勝ちやすい、不安定な状態だから。この3日間は、胡桃ちゃんも叶兎との接触は避けて」
接触を、避ける…。
間に、重苦しい沈黙が落ちる。
その時──ドタドタと、廊下を激しく走ってくる足音が静寂を破った。
バンッ!!
と、凄まじい音を立てて、ドアが再度勢いよく撥ね開けられた。
突然のことに私と叶兎くんが肩を揺らし、パイプ椅子に座っていた春流くんも視線をそちらへ向ける。
「叶兎…!!まずいことになった!」
息を切らせて飛び込んできたのは、時雨くんだった。
いつも冷静沈着な彼が、見たこともないほど血相を変えてタブレット端末を片手に握りしめている。
その異様な様子に、部屋の空気が一瞬で張り詰めた。
「時雨、ノックくらい…」
「そんな場合じゃないから!」
時雨くんは叶兎くんの言葉を荒々しく遮ると、手にしたタブレットをそのまま突き出してきた。
液晶画面の最上部には、赤黒い文字で『ニュース速報』の文字が明滅している。
『吸血鬼による連続暴走事件──』
不穏な見出しが目に飛び込んできた。
そして、その下に表示された再生ボタンが押されると、画面に映し出された映像に、私は息を呑んだ。


