叶兎くんは黙ったままじっと私を見ていた。
その瞳には、安堵と罪悪感がぐちゃぐちゃに混ざり合って揺れているみたいで。
「だから、自分のせいで傷つけたとか、思わなくていいからね。むしろ叶兎くんの方こそ随分身体弱ってたんだよ?」
「…………知ってる。今、立ってんのもきつい」
叶兎くんは自嘲気味に、力なく笑った。
そのとき、部屋のドアがノックされて、ガチャリとドアを開けて入ってきたのは春流くんだった。
「よかった、目が覚めたみたいだね。胡桃ちゃん体調どう?」
「大丈夫だよ。春流くんが治療してくれたんだよね…ありがとう」
「応急処置だけだよ。傷の塞がりが早いのは胡桃ちゃん自身の回復力。」
さらりと謙遜するように言っているけど、その手当てがなければかなり危険な状態だったと思う。
…自分でも分かるぐらい血が抜けている感覚はあったし。
言いながら春流くんは部屋の隅からパイプ椅子を持ってくると、それをガシャリと広げて腰掛けた。
少しだけ、その表情が真剣なものに変わる。
「それと、二人に伝えておくことがある」
「……?」
「例の合成血。あれが完全に叶兎の体から抜けるまで、最低でも3日はかかる。だからその間は、血液の摂取を一切控えること。……特に、胡桃ちゃんからの『吸血』は絶対ダメだからね」
ちらり、と春流くんの鋭い視線が叶兎くんに向けられた。
「特に吸血は」という言葉に強い警告が込められている。


